こんにちは。ORIGAMI JOURNAL編集部です。
まずは、商品アピールをさせてください!
私たちのORIGAMIは、一見ごくふつうのカラフルなカップ、ドリッパーに見えますが、それぞれに美味しいコーヒーを入れるための様々な工夫が隠されています。
たとえば……

ドリッパーなら・・・
○縦の溝がドリッパーとペーパーの間に空気の道をつくり、それによってドリップ時の流れ落ちるスピードを安定させ、最適な蒸らし時間での抽出をサポート
○きれいな「円すい形構造」で珈琲の粉がお湯に浸る時間が長くなり、しっかりと水分を吸収。香り豊かに粉がふっくらと膨らみ、豆本来の魅力をじっくりと引き出す
○陶磁器は熱伝導率が高く、蒸らしに最適

カップなら・・・
○カップの縁から底にかけて滑らかな曲線をつくることで「対流構造」を実現。カップの中でエスプレッソとミルクが綺麗に混ざり合い、コントラストの効いた美しいラテアートづくりをサポート
○指にフィットしやすいコンパクトなハンドルの安定感は抜群
○厚みを絶妙に変化させた心地よい口当たり
と、最高の一杯を目指すバリスタの方にとって、素晴らしい相棒になれる道具なのです!
……さて、アピールはこのぐらいにしておいて、今回はこのORIGAMIの開発に携わったデザイナーに話をお聞きします。どんなところに苦労し、解決していったのか。話してくれるのは光洋陶器の松原さんです。

コーヒーカップ、新しい構造への挑戦。
松原
ORIGAMIでは、陶器メーカーとして50年の歴史がある光洋陶器で、いくつかの初挑戦に取り組みました。
たとえば、カップの内側の厚みがところどころ違うでしょう? 特に底の部分は滑らかなカーブがある。普通のカップは直線の組み合わせです。でも、カーブをつくることで、ラテを注いだ際に対流が起こって、美しいラテアートができる。対流構造と言われるものですね。この構造には苦労させられました。
——具体的には、どんな部分が大変だったのでしょうか?
松原
成形するときには、型に土を入れて、コテ※でぐーっと土を殺して(締めて)いくんですけど、アールの部分の肉が厚いので、先の方にシワが寄っちゃうんですよ。シワができると商品にならないから、厚みを微調整して、ギリギリの線を探す必要があって。ここに一番時間がかかりました
※鉄製で回転する型。陶器の製造では一般的に使用される

松原
あと、内側の厚みがところどころ違うのに、容量は厳密に決まっているじゃないですか。バリスタの国際大会基準のエスプレッソカップ60-90ml、カプチーノカップ150-180ml(2016年からはミルクビバレッジに変更)。
ふつうのカップなら簡単なのですが、厚みが違う分微妙に内容量も変わってしまう。厚くした部分の肉を、じゃあどこにもっていこうか、こっちかな、あっちかな、と設計では繰り返していましたね。

——そんなに微妙な構造だと、現場でも難しいという声があがりそうですね……。
松原
そうなんです。計算上うまくいっても、現場で土を入れるとやっぱりシワができちゃって。職人と腕組みながら、やり直しですよ。土を押し込む“コテ”という鉄製で回転する型みたいなものがあるんですが、この形がそのままカップの内側の形になるんです。これを何度も現場で調整しながら進めていきました。

陶器で作れるのか? という限界に挑んだドリッパー。
——ORIGAMIのもう一つの商品であるドリッパーですが、こちらも独特の形状ですよね。特にギザギザしたところ。陶器で作るのは大変だったんじゃないですか?
松原
「実はですね、コーヒーカップよりもドリッパーの方が圧倒的に大変でした(笑)。先ほど話をしたカップは大体半年ぐらいで完成したのですが、ドリッパーはその倍以上の時間がかかったんじゃないかな」
——それはやっぱり、このギザギザに?
松原
はい
——構造を実現するのが難しかったんでしょうか?
松原
というより、そもそもギザギザがドリップに適しているとは分からなかったんですよ。これは試行錯誤したアイデアなのですが……。

——いまとはずいぶん違う形ですね。
松原
ペーパーとドリッパーには空間があったほうがいいというイメージは当初からあったんですが、これにはかなり迷いがありますよね(苦笑)。これはろくろ成形というやり方で作っていて、これ(突起)を後付けしたり色々やってみました。でも、どうもうまくドリップできない。
試作品をバリスタの方のもとに持っていき、目の前でドリップしてもらうんですよ。お湯が注がれる瞬間はドキドキでね。……でも、最初はうまくできなかった。それで発想を変えて、圧力鋳込みという方法に変えました。これなら複雑な形も作れる。それで、こんな形を考えたんです。

——花ですか?
松原
そう。あくまでアイデアベースだったんですが、目の前でバリスタの方にドリップしてもらうと綺麗に抽出できた。ここで、ギザギザがポイントだって気づいたんですよ。よし、これでいこう。どうせならORIGAMIの名前らしく折り紙っぽくつくろうと。
ただ、実はここから完成までが一番大変でした(苦笑)。うまく鋳込めなかったり、形状が切れてしまったり……。複雑な形だからこそ、安定して生産できるようになるまでに時間がかかる。(完成したORIGAMIを見ながら)苦労した分、いいものになったと思います。


デザイナーとして、陶器をつくる面白さ。
——松原さんは、この業界で20年以上の経験があるということですが、ずっと陶器を扱ってきたんですか?
松原
確かに、前職の時代も含めると、それぐらいやってきましたね。ずっと陶器です。私は生まれも育ちも岐阜で、父も陶器に関わる仕事をしていました。上絵付けといって、白い磁器に絵付けをする職人です。家で仕事をしていたので、物心つく頃から父の仕事を見ていました。正直、同じ業界にいくとは思っていませんでしたが……これも縁ですかね。気づいたら私も陶器に携わっています
——デザイナーとして、陶器の魅力ってなんでしょうか?
松原
実は、陶器という素材にはそんなにこだわっていなくて。ガラスでも金属でもデザインするという意味では関係ありません。
ただ、樹脂やガラスと違って、陶器はコントロールがすごく難しいんですよ。収縮があり歪みが避けられない。釜の中で一回ジェル状みたいになってそれが冷めて形になるわけじゃないですか、それを予測して対応する難しさが僕は好きですね。
あと、釉薬も面白い。極端なことを言えば、同じ釉薬使って同じ釜で焼いても今日焼いたものと明日焼いたもので違っていて。窯から出てきたときの、こうきたか! っていう驚きがあるんです。やっぱり、陶器はどこまでいっても自然素材ですから

松原さんの話を聞いて、ORIGAMIが余計に愛おしく感じました。
ORIGAMI JOURNALでは、これからも社内外のさまざまな人をインタビューしていきます。ぜひ次回もお楽しみに!

加藤信吾
Kato Shingo
ORIGAMIのブランド設計に外部パートナーとして携わるなかで、様々なバリスタと出会い、各地のスペシャルティコーヒーに感動し、気がつけば一日2杯のコーヒーが欠かせない日々を送る。
twitter:@katoshingo_
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