カフェで飲むコーヒーはカフェだけのもの。豆の選別から始まり、ロースト加減、保存の仕方、挽き方、ドリップのテクニックといったコーヒーの味そのものはもちろん、壁に飾られたアートや心地よい音楽、それに絶妙なサービスが醸し出す空間が、そのお店でしか得られないコーヒーの体験をつくりだします。
でも、家で飲むコーヒーも美味しく淹れたい。プロの技を知りたい。大好きなあのお店の、あの味に近づけたい。
コーヒー好きなら誰もが一度は悩む、自宅でのコーヒーの淹れ方をバリスタに聞きました。最初のバリスタは「TRUNK COFFEE」のオーナー/バリスタの鈴木さんです。ぜひお試しあれ。
鈴木さんの記事はこちらからご覧いただけます。
TRUNK COFFEE
オーナー/バリスタ 鈴木康夫
愛知県出身。元大手旅行代理店勤務後、コーヒーを学ぶためデンマークへ。コペンハーゲン・ノルウェーで歴史ある名店のカフェで修行し、デンマークでは日本人初のバリスタとして勤務。帰国後、勤務店の海外初進出第1号店のヘッドバリスタとして設立から携わる。その後TRUNK COFFEE 設立。これまでの常識にとらわれない発想と活動が、様々なメディアで注目されている。
TRUNK COFFEE ウェブサイト
http://www.trunkcoffee.com

家でコーヒーを淹れる行為そのものも、ひとつの価値だと思っています。僕は年間何十本もコーヒーのワークショップをやるんですけど、そこでは美味しいコーヒーを淹れることはもちろん大事なんですが、ドリップする時間を作って、それを味わうトータルのプロセスを大事にしてほしいと伝えてきました。
お店では、当然いつ来ても最高の味を楽しんでいただけます。でも家で飲む分にはいろいろ試してほしくて。例えば、豆を細かく挽いたら甘さや香りは出るけど雑味とか苦味も出ます。ちょっとえぐいなと感じたら粗めに挽いてみる。お湯の温度が低すぎると酸味が強くなるから、次は高温にしてみるとか。そんな風に自分の好みを探すのも家で淹れる醍醐味だと思います。失敗しちゃって、濃く出すぎたらお湯を足せばいいんですよ。気軽に楽しんでください。
これから紹介するのは僕のレシピです。ぜひ家で淹れるときの参考にしてください。

事前準備として、豆を入れずフィルターをセットした状態で水を注ぎます。紙を洗うって言い方をするんですが、そうすることで紙の匂いが取れます。お湯は90度前後。硬水は避けてください。


15gの豆を入れたら、やさしく円を描くようにして、約40gのお湯をのせます。のせたらスプーンでかき混ぜてあげる。そのまま130gまでお湯をのせます。注ぐというより、のせてあげるようにやさしく。
ちなみにまぜる箇所はドリッパーによっては飛ばしてもいいです。ORIGAMIのドリッパーの場合は先がとんがっているので、一番下までの距離が結構あるんですよ。お湯を入れた時に、上は濡れているけど下は濡れていない状態だと均等に蒸らされないから混ぜる。
もう一つの理由は、ドリップしたことある方は分かると思うんですが、蒸らした後に注ぐと大きい気泡がぽこぽこ出てきますよね。そのとき、チャネリングって言って水が通り道ができるんですが、そこから抽出されていない水がどんどん落ちちゃうんですよ。水の逃げ道なんです。スプーンで混ぜてあげるのは、それを防ぐためでもあります。底が平らなドリッパーなら混ぜる必要はありません。
さて、お湯が半分くらいまで下がってきたら次は190gまでのせてあげます。さらに半分まで下がったら今度は240gまで。



コーヒー豆によって時間は変わってくるんですが、今回のレシピでは2分30秒経ったら落ちきっていてもいなくてもフィルターを外してください。抽出時間が長くなると雑味が出てくるので。
あと、ちいさなポイントですが、うちの場合はカップを温めずに出すんですよ。熱すぎるとその刺激で味が分からなくなっちゃうから。わざとカップを温めずに提供することで70度ちょっとまで下がり、一口目から美味しいと感じられます。
さあ、これでできあがりです。どうぞご賞味ください。


【レシピまとめ】
・豆を入れずフィルターをセットして水を注ぎ、紙を洗う
・豆(15g)を入れて約40gのお湯をのせる(温度は90度前後)
・のせたらスプーンで軽くかき混ぜる
・次に130gまでお湯をのせる
・お湯が半分ぐらいになったら190gまでのせる
・さらに半分まで下がったら240gまでのせる
・お湯をのせはじめてから2分30秒たったらフィルターを外す
・できあがり
※水の量はサーバーの下にドリップスケールを敷いて計ります。ない場合は目分量で調整してください。
今回のレシピに使ったのは、ケニアのカブチリという豆で豊かな果実味が特徴です。
TRUNK COFFEE のECサイトでも購入いただけます。
http://trunkcoffee.thebase.in/items/8883894
保管方法は直射日光のあたらない常温で、なるべく早めにお飲みください。
協力:TRUNK COFFEE

加藤信吾
Kato Shingo
ORIGAMIのブランド設計に外部パートナーとして携わるなかで、様々なバリスタと出会い、各地のスペシャルティコーヒーに感動し、気がつけば一日2杯のコーヒーが欠かせない日々を送る。
twitter:@katoshingo_
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