コーヒーが僕を遠くに連れてきた。

コーヒーが僕を遠くに連れてきた。

Good Coffee ディレクター 竹内剛宏

2018.01.22

こんにちは。ORIGAMI JOURNAL 編集部です。

今回のゲストは、スペシャリティコーヒーが楽しめる国内外のコーヒーショップ・カフェ情報を発信しているメディア「GOOD COFFEE」ディレクター 竹内さんです。

竹内さんはコーヒースタンド「THE LOCAL」にオープン時から携わり、また日本最大級のコーヒーイベントである「TOKYO COFFEE FESTIVAL」の仕掛け人のひとりでもあります。

インタビュアーの加藤とは、ORIGAMIのイベント出展時からのつながりで、THE LOCALさんでのワークショップなどではORIGAMIカップも使っていただいています。

コーヒーをウェブとリアルの両面から発信している竹内さんの、活動のきっかけからお聞きしました。どうぞお楽しみください。

株式会社 Good Coffee
ディレクター 竹内剛宏
1982年北海道生まれ。大阪府出身。Web制作とマーケティングを専門とする株式会社TMC所属中に「Good Coffee」を立ち上げる。2012年に個人サイトとしてスタートした同メディアは、現在は法人化し日英の両言語で運営。現在はGood Coffeeと同じコンセプトを持つコーヒースタンド「THE LOCAL」を運営する傍ら、各種コーヒーイベントの企画・運営にも積極的に携わる。

Good Coffeeウェブサイト
https://goodcoffee.me

最初は、たった一人から始まった。

加藤 
(店内を見渡しながら)THE LOCALさん、すごく素敵な空間ですね。オフィスも兼用と聞きましたが。

竹内
ありがとうございます。上の階にオフィスがあります。

加藤
こんな場所で働けるのは羨ましいです。
さて、竹内さんはメディアサイトのGood Coffee 、そしてこのTHE LOCALさんの運営に携わられているということですが、元々はコーヒーとはぜんぜん違う業界の方なんですよね?

竹内
はい。ほんの数年前まではWebデザインなどがメインの仕事でした。お客様の依頼に合わせてWebサイトを作ったり、広告の運用をしたり。でも、ずっと自分たちが主体となれる事業やサービスを探していたんです。

加藤
それでコーヒーに目をつけたんですか?

竹内
ずいぶん色々やりました。子供服のお店を紹介するメディアをつくってみたり、ファッションスナップサイトを開設したり。どれも全然うまくいかなかったですけど(笑)。

でも、個人としても何かやりたいという思いがずっと続いていて。確か2012年の冬でしたが、コーヒーショップを紹介するサイトとして僕ひとりで始めたのがGood Coffeeです。妻がバリスタだったこともあって、よくカフェ巡りしていたんですよ。自分でデザインして、プログラムして。

加藤
たった一人でのスタートだったんですね。すぐに人気が出たんですか?

竹内
最初は全然ダメでした。月間の訪問者は100人ぐらいだったかな。1日10人のときもありましたし。誰も見てないなーって思いながらも、週末妻とカフェを渡り歩いて、淡々と更新していました。

可能性が見えてきたのは、半年ぐらい経ってからですね。妻の勤務先の先輩バリスタが「旦那さん、面白いことやってるじゃん」って見てくれるようになって。店舗の撮影にも協力してくれて、コンテンツが充実してきた。少しずつ業界の中で知られてきて、会社として運営しようということにもなった。そのあたりから動きが加速してきました。

コーヒーは飲まないとわからない。ではどうするか?

加藤
その頃、みんなコーヒーの情報を欲しがっていたんでしょうか?

竹内
コーヒー業界は今でこそ雑誌で特集されたり、ある程度市民権を得つつあるんですが、Good Coffeeをはじめた当時はほとんど認知度はなかったです。

たとえばスペシャリティコーヒーは「酸っぱいコーヒーだよね」ぐらいの印象だったんじゃないかな。でも、それってすごく勿体無いし、僕らにもできることがあると思ってメディアと連携してカッピングイベントを始めました。

加藤
ワインのテイスティング会のようなものですよね。

竹内
はい。当然なんですが、コーヒーって飲んでみないと分からないものです。だからアメリカのコーヒー屋さんを回って様々な豆を買って、少人数のイベントをはじめました。それがすごく評判良かったんですよ。みんな知らなかったコーヒーと出会えて喜んでくれたし、僕らもユーザーさんと直接触れ合えるのが嬉しかった。その中で、海外にはコーヒーのお祭りがあることを知ったんです。

加藤
ニューヨークやロンドンのコーヒーフェスティバルのことですね。向こうは相当大きい規模で開催していると聞きます。

竹内
僕らはそれを日本でできないかと漠然と考えて。でも僕らはイベント会社ではないので見当もつきません。そんなときに、今はTHE LOCALのヘッドバリスタでもある大槻君に出会ったんです。

加藤
すごくいいタイミングですね!

竹内
彼は「もっとコーヒーをみんなに知ってもらいたい!」って思いがすごく強いんです。だから話も盛り上がって、二人で簡単なイベント企画書まで作りました。で、どうしようかという段になって、青山で開催されていたファーマーズマーケットのような雰囲気で開催したいという彼の想いから直接運営会社に持ち込んだんです。これが今のTOKYO COFFE FESTIVLの原型です。

加藤
どうしてファーマーズマーケットさんに決めたんですか? 以前から交流があったとか。

竹内
いや、完全に持ち込みです。運営の方に連絡してアポを取ってプレゼンしました。それからすぐにプロジェクトが始まったんですが、そのスピード感は僕らと彼らの思想が近かったからだと思います。

僕らは、コーヒー農園も、自家焙煎のお店(ロースター)もレイヤーは違えど同じコーヒー生産者として捉えているのですが、まずは全国のロースターさんのコーヒーを東京で気軽に味わってほしいと企画したんです。

それは、ファーマーズマーケットが大事にしている、生産者と消費者が顔を合わせてやり取りをする部分に合致しています。

最終的には共同運営という形で一緒に委員会を立ち上げて、TOKYO COFFEE FESTIVAL の第一回が開催されました。それが2015年の秋。ありがたいことにとても評判が良くて。それから年に二〜三回のペースで開催しています。

もっと日常的にコーヒーを届けたい、という思いで始まったTHE LOCAL。

加藤
こちらのTHE LOCAL さんの開店が2016年の3月とお聞きしましたが、イベントからほとんど時間がないですよね。かなり急ピッチで話が進んだんですか?

竹内
2015年の秋口くらいに話が決まり、なぜか内装担当に僕がアサインされて、本当にバタバタでしたね。当然なんですが、Webとは全然作り方が違ってすぐに作り直せないし段取りは簡単に変えられないし……すごく勉強になりました(笑)。

でも、この苦労のおかげで取材先でも話が盛り上がるんですよ。店内のレイアウト見ながら「この箇所、施工大変じゃなかったですか?」とか、やらないと分からないものですからね。

加藤
私はメーカー側の人間なので、何かをつくる大変さはよくわかります。よくチャレンジされましたよね? なかなかメディアやイベントでお金を稼ぐの大変だと思うのですが……

竹内
僕らGood Coffeeがセレクトした豆を紹介したいと考えると、年に数回のフェスだけでなく、もっとレギュラーに届ける場所が必要だと思っていました。

ただ、おっしゃる通り資金が潤沢かと言えば全然そんなことはなく。うち単独では難しかったと思います。

竹内
店内にサイネージがあるんですが、あれは事前注文・決済アプリの「O:der」のシステムのひとつで、現在の注文状況がリアルタイムに表示されています。

THE LOCALはその提供会社との共同出資という形で実現したんです。うちとしてはカフェを運営したかったし、パートナーの会社にとってはサービスのデモ店という立ち位置ですね。

加藤
なるほど、そういう事情もあったんですね。
ところで、二階ではイベントや勉強会的なものも実施されていて、そこではORIGAMIを使っていただいていると聞きました。本当にありがとうございます。評判はどうでしょうか?

竹内
Good Coffee Academy という一線で活躍されているバリスタやロースターをお呼びして技術を継承する場があるんですが、そこでラテボウルを使わせてもらっています。すごく評判いいですよ。

ORIGAMIはラテを作る際のミルクの対流までちゃんと考えられているじゃないですか。それにデザインやカラーリングも豊富でお店でも使いやすい。バリスタと向き合うものづくりをされているのが本当に素晴らしいです。

加藤
ありがとうございます。そう言っていたいただけると本当に嬉しいです。

竹内
バリスタの方たちはすごくカップにこだわりますよね。やっぱり口当たりで全然味が違いますから。うちは1Fと2Fで違うカップを使っているんですが、飲み比べるとその味の差に驚きます。

自家焙煎のお店の方なんかは、自分が焼いたコーヒー豆の味がこのカップで出るのか? みたいなレベルで検証されるので、ORIGAMIはかなり高い要求に応えられていると思いますよ。

今後の進む道と、自分たちの責任。

加藤
Good Coffee として、メディアを育て、イベントを開催し、お店も出しました。竹内さん一人で始められた頃から考えると、ずいぶん遠くにいかれたと思います。次に目指すべきところってどこなんでしょうか?

竹内
そうですね、本当に遠くまで来ました(笑)。

Good Coffeeはもともとコーヒーショップとお客さんをマッチングさせるところから始まりました。今は、その意味をもう少し拡大解釈して、コーヒー業界に人材を送り出すお手伝いまでできないかと考えています。

僕もお店をやってわかったんですが、小さなお店ってそんなに儲かることはなくて、育てられる人の数には限界があるんです。でも、技術を学びたい人はいる。そこで先ほどあげたGood Coffee Academy のような場所があれば、一流の技術を身につけることができる。

修了後は別のお店に修行にいってもいいし、独立してもよくて。もちろん東京である必要もないし、たとえば地方のレストランに就職して美味しいコーヒーを淹れるのも素敵じゃないですか。生産者にとってはお客さんが増えるし、コーヒー好きには嬉しい変化ですよね。

そういういい循環が生まれるということが僕らの理想ですし、そのためにもGood Coffeeをもっといいメディアにしたいと思っています。いつか、全国のいいお店をもれなくピックアップしたスペシャリティコーヒーデータベースにしたいですね。

加藤
これからが楽しみですね。ところで、その想いの源泉はどこにあるのでしょうか? 責任感でしょうか。

竹内
月間で何十万人というユーザーがいて、多くのカフェの方にも協力いただいていますし……そうですね、ある種の責任感はあります。
今、東京のコーヒーマーケットはブームというか、追い風が吹いていると思います。新しいお店もどんどんできてますし。

でも僕らが辞めてしまったら、せっかくの盛り上がりに水を指してしまうかもしれない。たとえ採算が合わなくなったとしても、どういう形であれ続けていきますよ。僕ひとりになっても、スタート地点に戻るだけなので(笑)。

加藤
頼もしいです。私たちも今後ORIGAMIでイベントに参加させていただくと思いますし、またお話できること楽しみにしています。

竹内
今度はイベントでお話しするのも面白そうですね。コーヒーカップはバリスタの方のほうがこだわりますし。そのときはどうぞよろしくお願いします。

加藤
ぜひよろしくお願いします。今日はありがとうございました。

いかがだったでしょうか。

いまやコーヒーのメディアとしては業界でも知られる存在となったGood Coffeeさんのお話は、ORIGAMI JOURNAL編集部としても刺激あふれるものでした。僕たちも頑張ります!

それでは次回もお楽しみに!

今回取材させていただいたTHE LOCAL さんは渋谷・青山通り沿いにあります。お近くに行かれる際はぜひお立ち寄りください。事前注文・決済アプリ「O:der」を使えば待たずにすぐにコーヒーを楽しめますよ!

THE LOCAL
http://thelocal2016.com/

加藤信吾

Kato Shingo

with Barista ! 編集長 ライター / コピーライター
ORIGAMIのブランド設計に外部パートナーとして携わるなかで、様々なバリスタと出会い、各地のスペシャルティコーヒーに感動し、気がつけば一日2杯のコーヒーが欠かせない日々を送る。
twitter:@katoshingo_

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