こんにちは。ORIGAMI JOURNAL 編集部です。
今回は、イタリアやアメリカなどコーヒー先進国の優れたコーヒー関連製品を輸入販売するFBCインターナショナル 代表取締役社長の上野登さんのお話の後編です。
後編は今の日本のコーヒー文化に対する想いを語っていただきました。どうぞお楽しみください。
有限会社 FBCインターナショナル
代表取締役社長 上野登
神奈川県出身。幼少期からコーヒーを嗜む。1980年代、シアトル系のコーヒーに触発され起業を決意。1992年に米国 Java Trading 社の日本支社長に就任後、独立し株式会社 Java Trading Japanを設立。その後、個人事務所を立ち上げ、シアトルから Fidalgobay Coffee を輸入開始。2006年に有限会社FBCインターナショナルを設立、現在に至る。2005年から2009年まで、一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会 理事・事務局長としてスペシャルティコーヒーの普及・市場拡大に従事している。
FBCインターナショナル ウェブサイト
http://fbc-intl.co.jp/
今のコーヒー市場はブームだ。

加藤
上野さんは、日本のコーヒーカルチャーのまさに黎明期から最前線に立たれていたわけですが、その頃から比べて、今のコーヒー業界はどう映るのでしょうか?
上野
自分のスタイルを持ったバリスタやカフェオーナーが増えてきていると思います。格好いいひとが増えてますよね。僕がやっていた頃はまだ異質だったカフェカルチャーも、ずいぶん根付いてきているんじゃないでしょうか。
……ただ、今のコーヒー業界は一種のバブルのように感じます。特に東京の市場はそうでしょう。簡単にカフェを開業する人が多すぎるのではないでしょうか。
加藤
上野さんから見て、どういうカフェの開業が不安に感じますか?
上野
実は、以前にカフェの開業についての本を監修したことがあるので、ちょっと厳しい言い方になるんですが(苦笑)。
「抜きん出たものは何もないけどコーヒー淹れるのが好きだし、落ち着いたオシャレなお店で、お客様の笑顔を何より大事にします」……というタイプのカフェの起業はおすすめできません。おしゃれな内装とそれなりのサービスがあればお客さんが来るかと思ったら、大きな間違いだと思います。
僕はアパレル、ホテルとデザインに深く関わってきたから分かるんですが、デザインの流行は常に移り変わるものです。よっぽどの本物を使わない限り、その部分で長く勝負するのは難しいのではないでしょうか。
加藤
なるほど。逆に上野さんが応援したくなるタイプも教えてください。
上野
他の人がやっていないことに挑戦する人はすごく応援したくなります。自分と重ねてしまう部分もあるんでしょうね。ファーストランナーは前例の道がないから、常に冒険だけど一番面白い。もちろん脱落する可能性も少なくありませんが、特に若い人は業界のファーストランナーになってほしいし、僕は必ず応援します。
あと、ひとつ若い方にアドバイスをするとすれば、ラテアートでもサービス形態でも、何でもいいですが「これが私のオリジナリティ」と呼べるものを持ってほしいですね。ブームでお店が乱立しているからこそ、独自性が非常に重要です。


加藤
ぜひORIGAMIについてもご意見いただけないでしょうか。
上野
ORIGAMIの一番の魅力は色ですね。このきれいな色の展開は、お店ですごく使いやすいと思います。あと持ち手にちゃんと指が入るというのは意外と大事なポイントです。
ヨーロッパのバリスタは体が大きいからか、カップは持ち手をつまむのが主流です。だから指なんて入らなくてもいいんですが、日本人のバリスタはそうはいかない。ラテアートなど細かな動きをする際には、ちゃんとホールドするために指を入れたい人が多いですね。
形状のすごく細かい部分では、底の形で若干僕の好みとの違いがあって、特注で作ってもらったりしていますが、納期、品質、価格のバランスの満足度はすごく高いですよ。
あとオリジナルのロゴ入れがリーズナブルなのは本当に助かっています。うちの取引先は業務用で使う方がほとんどで、ロゴ入れのニーズは小さくありません。他のところだと型代から高価になりがちなんですが、ORIGAMIは手頃なのでとても喜んでいただけています。
加藤
ありがとうございます! プロユースの方に評判がいいのは本当に嬉しいことです。
上野
いや、お世辞抜きでいいと思いますよ。やはりお店で使うものですから、品質の低いものは使えません。生地の肉の厚さもちょうどいいし、丈夫だから食洗機も使えますからね。これからも期待しています。
未来をつくるのは、いつも若者だ。

加藤
最後に、FBCインターナショナルのこれからについても教えていただけないでしょうか。
上野
僕がコーヒー業界に入って、約30年の時間が経ちました。ジャワコーヒーやスターバックスさんらシアトル系のカフェが作ってきたセカンドウェーブと呼ばれるスタイルに加えて、今はブルーボトルさんをはじめとするサードウェーブが話題になっています。物珍しかったバリスタという言葉もずいぶん浸透しました。
僕はその移り変わりを最前線で眺めてきました。だから、次の時代は20代のスタッフが作っていくんだと思っています。僕が築いてきた業界のネットワークに頼るのではなく、若い彼らが新しい人とつながり、新しいうねりを生んでいってほしい。
ただ、ひとつ彼らに伝えたいのはダサいものは扱わないこと。やっぱり常に業界のファーストランナーであってほしいし、格好いいカフェを作りたい人がFBCインターナショナルに行けば揃うと感じてくれる会社であってほしい。そう願っています。
加藤
やはり、格好いいというのは大事にされているんですね。
上野
もちろんです。やっぱり人の印象は総合的につくられるものですから。ORIGAMIがいくらいい商品でも、売っている加藤さんがすごくダサかったら、やっぱりいい商品に見えなくなりますからね。
加藤
はい。私も心がけます(笑)。
今日は長い時間ありがとうございました。本当に楽しい時間でした。
上野
こちらこそありがとうございました。もっと昔話をしてもよかったんですが、細かく語ると明日の朝になってしまうので、また次回にでも。
加藤
そのときは覚悟してお聞きします。


いかがだったでしょうか。
日本のコーヒー文化の黎明期からずっと業界を見つめてきた上野さんの視点は、厳しくも温かいものに感じました。
次回もぜひお楽しみに!
今回取材させていただいたFBCインターナショナルさんは世界中から選りすぐりのコーヒー関連商品を輸入・販売されています。インターネットでも購入ができるので興味ある方はぜひのぞいてみてください。ORIGAMIもありますよ!
FBCインターナショナル ECサイト
http://www.e-primal.com/esp_supply.html

加藤信吾
Kato Shingo
ORIGAMIのブランド設計に外部パートナーとして携わるなかで、様々なバリスタと出会い、各地のスペシャルティコーヒーに感動し、気がつけば一日2杯のコーヒーが欠かせない日々を送る。
twitter:@katoshingo_
PICK UP
People /
2021.11.06
より多くの人に、素晴らしいコーヒーとの出会いを【Cup of Excellence Alliance For Coffee Excellence】
マネージングディレクター、Marketing and Membership Anna Abatzoglou様
PICK UP
変化を重ねて、生きていく。MILKBREW COFFEEを考案した酪農家の話【自由なコーヒー。vol.12】
ーーナカシマファーム 中島大貴
より多くの人に、素晴らしいコーヒーとの出会いを【Cup of Excellence Alliance For Coffee Excellence】
マネージングディレクター、Marketing and Membership Anna Abatzoglou様
世界のバリスタが唸る豆「ゲイシャ」で知られるナインティ・プラス社。そのこだわりの秘密と、希少コーヒーの新しい愉しみ方[後編]
ナインティプラス Joseph Brodsky
RANKING
2019.05.09
日本人としての誇りを胸に、死にもの狂いで、メルボルンでバリスタになった。【自由なコーヒー。vol.3】
Market Lane Coffee Head Roaster / Quality Control 石渡 俊行
11268 View