こんにちは。ORIGAMI JOURNAL 編集部です。
今回はゲストは東京メトロ日比谷線「入谷」駅から歩いて7分程度の場所で、本格的なエスプレッソを提供しているDAVIDE COFFEE STOP(以下ダビデコーヒー)のオーナー/バリスタの松下大介さんです。
松下さんは、バーテンダー、イタリアンレストランと飲食業の経験を積む中でバリスタという仕事に出会い、ラテアートにのめり込みます。「フリーポア」と呼ばれる、「道具を使わず」「注ぐだけ」で模様を描くラテアートの部門で、2011年アメリカでのワールドバリスタチャンピオンシップに出場。ベスト8の実績を残しました。
その後、2015年2月に独立。本格的なエスプレッソを出すお店として、地元の人や外国人観光客から人気を博しています。 ビビットな色合いで異国情緒漂う店舗の中、松下さんのコーヒーへの思いを加藤が聞きました。どうぞお楽しみください。
DAVIDE COFFEE STOP
オーナー/バリスタ 松下 大介
10代の頃からバーテンダーとして、レストランスタッフとして飲食店の接客に携わる。フレンチレストラン「オーバカナル(AUX BACCHANALES)」に在籍中、ラテアートの実績を評価され、ロンハーマンのカフェ一号店をバリスタとして担当。その後独立し、2015年2月にDAVIDE COFFEE STOPをオープン。外国人観光客を中心に人気を博している。
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バーテンダーがバリスタと出会うまで。


加藤
いつもORIGAMIを使っていただいてありがとうございます。
松下
いえいえ、こちらこそお世話になっています。カップへの問い合わせも少なくないんですよ。
加藤
それは嬉しいです。そういえば、どういうきっかけでORIGAMIを知っていただいたんでしょうか?
松下
2年ぐらい前ですかね、名古屋のトランクコーヒーさんがビックサイトのイベントで紹介していたのを見かけたのが最初です。ターコイズブルーあるじゃん! って嬉しくなって、すぐに注文しました。なかなかこの色はないんですよ。ロゴ入れもリーズナブルで助かりました。
加藤
(お店を見渡して)そういえば、店内にもちらほらとターコイズブルーが……



松下
開業の前の年、南カリフォルニアを旅行したんです。そのメキシコ国境付近の街並みがすごく素敵で、このお店のモチーフにしました。向こうだと、1棟丸々ターコイズブルーの建物が当たり前のようにあるんですよ。でも、さすがに店内全部だと室内が暗くなりそうで、差し色として使ったんです。カウンターや間口、他に何が使えるかと考えて、カップをこの色にしました。ラテアートも描きやすいですし、気に入っています。
加藤
ありがとうございます。そういえば、松下さんはラテアートでは世界大会にも出場された経験があると聞きました。元々そういった方面に興味があって、修行とかされていたんでしょうか?
松下
実は、僕の仕事のスタートはバーテンダーです。ここだけの話、10代からやっていました(笑)。それなりに長い時間、夜お酒を作る仕事をして、ワーキングホリデーでカナダに行っても向こうでバーテンやって。……でも、あるときキツくなっちゃったんですよね。
加藤
夜の仕事だと、体力がいりそうです。
松下
夕方から朝までの仕事ですからね。終わって帰って昼、午後1時か2時に寝て、夕方6時頃仕事に行くサイクルが、20代後半できつくなって。それと、僕自身はお酒を飲まないんですよ。仕事中の味見程度で、普段は本当に一滴も飲まないぐらいに。やっぱり、自分が嗜まないものをずっと続けていくのは難しいですね。
それで、もう夜の仕事は辞めようって思ったタイミングで紹介してもらったのが、代官山のイタリアンレストラン。お店で出すドリンクは、カクテルではなくエスプレッソ。食後のコーヒーです。そこでバリスタという仕事に出会いました。
でも、当時は、そんなにコーヒーが好きじゃない頃で。エスプレッソマシーンは熱いしデカイしそれほど興味を持てなかったんですが、それからオーバカナルというフレンチレストランに移って、考えがガラリと変わりました。
遊び以外で、初めて夢中になった、仕事。

加藤
移った先のお店も、コーヒーがメインのお店ではありませんよね? そこでどのような体験があったのでしょうか。
松下
オーバカナルでたまたま上司になった、吉田さんという方の影響がすごく大きかったと思います。彼は、社内でジョバンニさんと呼ばれていて、とにかくコーヒーへの造詣が深かった。基礎的なことはぜんぶ彼に教わりました。エスプレッソって何なのかという前提から、淹れ方の基本やコーヒーと向き合うスタンスまで、ぜんぶです。
豆の分量、押す力、落とす秒数と量、そういったものをすべて同じにして、同じ味を作ることがバリスタだと叩き込まれました。今では当たり前の話ですが、当時は2010年前後。バリスタなんて誰も知らない時代です。
彼の下で働いているうちにバリスタという仕事が楽しくなってきて、そのうちに仲間で集まってラテアートをやりだしたんです。仕事とは全然関係ないところで。

加藤
松下さんのラテアートは、仕事で培われたものじゃないんですか?
松下
フレンチレストランにカフェラテというメニューはないんですよ。基本はカフェオレ。オーバカナルでは、エスプレッソベースに牛乳を注いでいたんですが、表記上はカフェオレなので、表面に泡が浮いていてはダメなんです。ラテアートなんてもってのほかですよね。
だから、休日にみんなで牛乳買って豆持って、エスプレッソマシーンを扱っている企業のテストキッチンを借りて練習してました。ラテアートって、スチームのミルクの出方で液面が変わったり、手首の角度だったり、本当に些細なことで毎回仕上がりが違うんです。注げば注ぐほどに課題が増えていく。一向に完成しないのが、すごく面白くて。私の人生で遊び以外であれだけうつつを抜かすというか、夢中になったのは初めてのことでしたね(笑)。
加藤
なるほど。その情熱が、アメリカの大会出場も後押しされたんですね。
松下
そうですね。やっぱり、腕試しをしたくなりました。でも、当時日本では公式大会がなくて。それでインターネットで検索してたら、アメリカの方でワールドチャンピオンシップが出てきたんです。2011年の2月だったと思います。すぐに申し込んだら、書類選考に通っちゃって。だから、初めて出る大会がいきなりワールドチャンピオンシップだったんですよ。
ありがたいことに大会で評価いただいて、その実績をかわれてロンハーマンで初のカフェ事業に抜擢されました。そしていつしか独立を考えるようになり、2015年からこうして自分で店をやっているわけです。
加藤
このお店は、やはりラテアートが自慢というかこだわりなのでしょうか。
松下
今でもラテアートはやりますし、もちろん提供もしていますが、一番はエスプレッソを飲んでほしいという思いがありますね。
ラテは、つい注ぐところにフィーチャーされがちなのですが、間違いのないエスプレッソを落としてこそ成立するもの。だから、やっぱりエスプレッソが大事だと思っています。
コーヒーに砂糖を入れた方が美味しく感じる人もいて、それでいい。

加藤
お店をはじめて今年で4年目になると聞きましたが、オープン当初からどのような変化があったでしょうか。
松下
丸3年が終わって、ようやくエスプレッソ目当てのお客さんが来てくれるようになりました。オープンしたばかりの頃は、ほとんどがカフェラテかアメリカーノ。エスプレッソ = 苦い・量が少ない という先入観があるんでしょうね。
加藤
わかります。私もそういうイメージを持っていました。
松下
ですよね。だからなるべく説明するようにしています。コーヒーって本来苦くないんですよ、うちのは大丈夫ですよって。飲んでもらうと「あれ? 知ってるエスプレッソと違う」となる。苦味って雑味の一種で、淹れる側の抽出の問題なんです。
そうそう、(2018年)5月からグラインダーを増やすんですよ。シングルオリジン専用のやつ。浅煎りのブレンドされていないコスタリカ産の豆と、既存のブレンドと飲み比べたら面白そうじゃないですか。うちはコーヒー好きな外国人旅行客も多いので、より楽しんでもらえると思います。
加藤
確かに、取材中も外国の方がいらっしゃいましたよね。向こうの方と日本人ではコーヒーの飲み方に違いはありますか?
松下
外国の方の方が、コーヒーがずっと身近というか、自由ですよね。たとえばお砂糖とかバンバンいれる。こだわりの強い人だと「え? 砂糖入れるんですか?」って怪訝な顔する人もいますけど、自分好みにして飲むのが、その人にとっての美味しいコーヒーじゃないですか。
それに、僕も砂糖を入れた方が美味しいと思っていますし、お客さんにも勧めますね。これは好みの問題だけじゃなくて、味わい方の提案でもあるわけです。
たとえばブレンドされたコーヒーって、カップに4種類とかの豆が入ってるわけですよ。それをそのまま飲んで、自分の舌で全部感じられる人ってほとんどいないわけです。でも、そこに甘さという指標を与えてあげると、4つの味がクッキリと華やかになる。だから僕はお砂糖使いますか? ってお聞きします。それにうちのは天然の甜菜糖なんで、甘すぎない。ぜひお試しください。

加藤
(一口飲んで)ああ、確かに美味しいです。スペシャルティコーヒーだと、ついブラックで飲まないと……と思い込んでいたんですが、そうじゃなくてもいいんですね。
松下
そのまま飲んでほしい、と考えるバリスタもいると思いますが、私はあんまり固苦しくしたくないし、自分のこだわりを押しつけるのもね。
僕、エスプレッソの文化がすごく好きなんです。カウンターで注文して、砂糖パッと入れてパッと飲んで帰っていく。シンプルでいいじゃないですか。あのスタイルを広げていきたいですね。
加藤
私もこれからはときどき砂糖を入れて飲もうと思いました。今日はありがとうございます。
松下
こちらこそありがとうございました。ぜひ自由にコーヒーを楽しんでください。


いかがだったでしょうか。
異国情緒あふれる店内に、溶け込むように馴染んだターコイズブルーのORIGAMIの姿……。私はこっそりと感動しておりました。また新しいORIGAMIの魅力を発見したような気持ちです。
次回もお楽しみに!

今回取材させていただいたダビデコーヒーさんは、東京メトロ日比谷線「入谷」駅から歩いて7分程度の場所にあります。お近くに行かれる際はぜひお立ち寄りください。本格的なエスプレッソをお楽しみいただけます。
DAVIDE COFFEE STOP
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加藤信吾
Kato Shingo
ORIGAMIのブランド設計に外部パートナーとして携わるなかで、様々なバリスタと出会い、各地のスペシャルティコーヒーに感動し、気がつけば一日2杯のコーヒーが欠かせない日々を送る。
twitter:@katoshingo_
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