素材、焙煎、抽出、そのすべてに胸を張れる一杯を。

素材、焙煎、抽出、そのすべてに胸を張れる一杯を。

コフィノワ オーナー / ロースター 高橋史郎

2018.06.26

こんにちは。ORIGAMI JOURNAL 編集部です。

今回は、蔵前で自家焙煎コーヒー豆の販売とカフェを営むCoffee nova(以下コフィノワ)のオーナー / ロースターの高橋史郎さんがゲストです。

高橋さんは、コーヒーの評価を行うことができる米国の専門資格 CQI認定Qグレーダーであり、全日本コーヒー商工組合連合会が定めるJCQA認定コーヒーインストラクター1級を持つロースター。

豆の選別から、焙煎、抽出の各工程のすべてに情熱を注ぎ続ける高橋さん。彼がそのこだわりの目で選んだカップは、ORIGAMIのアロママグでした。どうしてORIGAMIだったのか、なぜアロママグだったのか、淹れたてのコーヒーを飲みながら、加藤が聞きました。どうぞお楽しみください。

 

Coffee nova コフィノワ 
オーナー / ロースター 高橋史郎
コーヒーの焙煎業務に13年間従事したのち、自分が感動した味を届けたいと、2016年に自家焙煎のお店「コフィノワ」をオープン。コーヒー豆の販売と卸を中心に、併設したカフェではこだわりの一杯を提供している。CQI認定Qグレーダー、JCQA認定コーヒーインストラクター1級。

コフィノワ
http://coffee-nova.com/

魔法のようなカップとの出会い。

加藤
今日はお時間いただきありがとうございます。開店のときお邪魔した以来ですので、二度目ですね。

高橋
はい。もう二年が経ちました。ORIGAMIのアロママグは重宝させてもらっています。

加藤
嬉しいです。ところで、高橋さんはどうやってORIGAMIを知られたのでしょうか? 今日はぜひその辺りから聞かせてください。

高橋
最初の出会いは、前職時代にお世話になった焙煎士さんからの紹介でした。「すごくいい器がある」と見せてもらったのがORIGAMIだったんです。色がキレイで、素敵だと思いましたね。当時はラテボウルを使っていて、まだアロママグではありませんでしたが。

加藤
何か切り替えるキッカケがあったのでしょうか?

高橋
どんなWebサイトだったか忘れましたが、あるときお客さまから「すぐに冷める」と書き込みがあったんです。ラテボウルの口が広いから冷めやすいと。それがずっと気になって、もう少し口が狭いマグを検討したんです。

……確か、2017年のカフェショーだったかな。そこでORIGAMIさんのブースでアロママグを見つけて、実際にコーヒーを淹れたものをいただいたんですよ。正直、驚きましたね。

香りの“かえり”がすごいんです。おそらく、薄口でドーム型になっているからだと思うのですが、その後自分で淹れたものをラテボウルと飲み比べても全然味が違う。香りでここまで味が違うのか。これは魔法だと思いました。

加藤
ありがとうございます。一般的なマグは、基本的に厚口で、形状もまっすぐですからね。

高橋
お客さまにもその香りの“かえり”は感じてもらっていて、コーヒーを飲んだお客さまがそのままマグを買われることも少なくありません。色の可愛さも好評ですが、飲むとこのマグの本当の良さに気付くみたいです。

自分が感動した一杯を、届けたい。

加藤
アロママグの特徴に、そこまで気づいていただいて本当に嬉しいです。香りへの着目は、さすがロースターさんですね。高橋さんは、いつ頃からこのお仕事をされているのですか?

高橋
このお店をオープンしたのは2016年ですが、それまでは中小のロースターの会社で13年間、勤め人としてコーヒー焙煎をしていました。

焙煎機も小規模で、自社でローストしたものよりも、OEMで他社に製造委託した豆を販売することがメインのお店でした。ただ、ちいさくても大手のスーパーさんをはじめ大規模な卸先もあって、一度に数トン単位を販売することもありましたね。そういう大きなところは、焙煎して即販売とはもちろんいかず、半年かけて企画を詰めていく仕事でした。

加藤
同じロースターでも、今とはずいぶん違うお仕事なのですね。

高橋
大量に焙煎するには、ここにあるようなスモールバッジの焙煎機では当然無理です。オートメーション化された工場で、巨大な熱源を使って10分足らずで焙煎していく。確かに効率はいいですよ。品質は安定しますし。でも、豆が持っているポテンシャルを引き出せているかというと疑問が残ります。

ロースターとして様々なコーヒー豆を目にするのですが、なかには本当にいいものがあるんです。感動するほど良質な豆が。でも、それが工場で大量焙煎され、1年の賞味期限を与えられて棚に並ぶことに……ちょっと違うんじゃないかと考えるようになって。

やっぱり、いい豆を丁寧に焙煎し、それをその場でお客さまに飲んでもらう。その味を気に入っていただいた方に、たとえ少量ずつでも豆を買っていただく。そんなお店をつくりたいと独立を決めました。

加藤
そういう経緯があったのですね。
これは好奇心からお聞きしたいのですが、当時に出会った「感動するほど良質な豆」とはどのようなものだったのでしょうか?

高橋
ウエウエテナンゴエリアのスペシャリティのグアテマラの豆です。それと、個人的にニエリ地区のケニアの豆が好きで、この二つに心を奪われました。もちろんお店でも提供しています。

すべての工程で、胸を張れる一杯を提供していく。

加藤
そういえば、高橋さんはCQI認定Qグレーダーという資格をお持ちということですが、これはどのような資格なのでしょうか?

高橋
ごく簡単に説明しますと、スペシャルティコーヒーのカップ評価ができる資格です。

スペシャルティコーヒーという言葉は、今でこそずいぶん一般的になってきましたが、昔はすごく曖昧なものでした。使用する豆が単一農園であればいいとか、生産元がわかればいいとかで安易に使われてきたんですね。

でも、今はカッピング評価で一定のラインを超えたものだけをスペシャルティコーヒーと呼びましょう、というのが主流で、その大元を作ったのがアメリカのスペシャルティコーヒー協会です。私がもっているQグレーダーは、特にアラビカ豆の評価ができる資格です。

加藤
はぁー。そんな資格があるんですね。知りませんでした。ちなみにカッピング評価とはどのようなものでしょうか?

高橋
ちょっとやってみましょうか?

高橋
カッピングは、コーヒーに何も足さないし引かないという条件で行うので、ペーパーフィルターで濾しません。挽いた豆をそのままお湯に入れます。

高橋
うん。これがグアテマラで、こちらはエチオピア。毎日飲んでますから、すぐに分かります。

高橋
評価する際は、こうやって(ズーッと音を出して吸う)、霧状にして喉の一番深い部分に当ててやります。すると香りをより敏感に感じられます。

鼻から嗅ぐものをアロマ、口に乗せて感じる香りをフレーバーというんですが、この二つがコーヒーの味を左右する、非常に重要な要素です。香りの中には、産地由来のテロワール、つまりオリジナルな土壌や気候・風土の特徴が含まれています。

加藤
なるほど。高橋さんがアロママグを評価いただく理由がわかった気がします。

高橋
私が、ロースターでありながら資格を取って毎日カッピングをしているのは、焙煎に適切なフィードバックができるからなんです。

焙煎技術があっても味の評価ができないと、自分が向かう方向が正しいかわからないですよね。コーヒーって、豆という素材があって、焙煎があって、抽出があって、すべての工程で取り返しがつかないんです。いい豆でも、焙煎で失敗したら、たとえ世界最高のバリスタでも美味しくできない。もちろん逆も同じことがいえます。

だからこそ、焙煎だけでなく、抽出もやる。そしてカッピングでなるべく正確に評価する。その繰り返しの中で、自分が本当に満足できたものだけをお客さまに提供していく。そういう考えでこのお店をやっています。

加藤
コフィノワさんのコーヒーの美味しさの理由が、少し分かった気がします。今日は本当にありがとうございました。

高橋
こちらこそ、ありがとうございました。

いかがだったでしょうか。

バリスタとはまた違った、ロースターの方ならではのこだわりを随所に感じる取材になりました。

ちなみに、恥ずかしながら私も改めてアロママグと普通のカップを飲み比べてみたんですが、本当に香りがぜんぜん違いますね。驚きました。ぜひみなさまもお試しください!

それでは次回もお楽しみに。

今回取材させていただいたコフィノワさんは、都営大江戸線(環状部)蔵前駅A5口から徒歩1分の場所にあります。こだわりのコーヒーをぜひご堪能ください!

コフィノワ
http://coffee-nova.com/

 

加藤信吾

Kato Shingo

with Barista ! 編集長 ライター / コピーライター
ORIGAMIのブランド設計に外部パートナーとして携わるなかで、様々なバリスタと出会い、各地のスペシャルティコーヒーに感動し、気がつけば一日2杯のコーヒーが欠かせない日々を送る。
twitter:@katoshingo_

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