こんにちは。ORIGAMI JOURNAL 編集部です。
今回のゲストは、中国 南京のカフェ「UNiUNi」でバリスタとして活躍されている杜嘉宁(ドゥ・ジャーニン 以下ドゥ)さんです。
ドゥさんは、バリスタの国際的な競技会である中国ブリュワーズカップの2018年度チャンピオン。

激戦の中国大会ではもちろん、2018年11月にブラジルで開催される世界大会でもORIGAMIのドリッパーで勝負に挑むというドゥさんにお話を聞くことができました。
二十歳で会社員を辞め、今の仕事へ転身を遂げ、中国トップバリスタの一人となったドゥさんが語るバリスタという職業の面白さとは。どうぞお楽しみください。
UNiUNi(中国 南京)
バリスタ 杜嘉宁(ドゥ・ジャーニン)
2010年からバリスタとしてキャリアスタート。2013年にUNiUNiに入店。競技会への参加を開始する。2015年中国ワールドバリスタチャンピオンシップ3位入賞。2016年、2018年中国ブリュワーズカップチャンピオン。現在は2018年11月にブラジルで開催される世界大会に向けて、最高のサービスを模索している。
UNiUNi web
https://weibo.com/u/5121061202

ORIGAMIを携えての中国ブリュワーズカップ優勝。

加藤
まずは中国ブリュワーズカップの優勝、おめでとうございます。私たちのドリッパーを使っていただき良い結果が出たということを大変嬉しく思っています。このインタビューでお会いできることを楽しみにしていました。
ドゥ
ありがとうございます。11月にブラジルで開催される世界大会でも全力を尽くそうと思っています。
加藤
世界大会に向けて構想は固まってきていますか?
ドゥ
今トライしているのは、2ポッドで同時に4杯のコーヒーを淹れるという方法です。水の変化や、水と粉の比率などによって、どう抽出すれば最も美味しく淹れられるのかを探求しています。
ORIGAMIのドリッパーは左利きの私でも使いやすくてありがたいです。中国チャンピオンになって注目されるようになったら、他の選手からも「ORIGAMIを使ってみたい」という声をよく聞きます。
加藤
左利きとおっしゃいましたが、やはりマシンなどは使いづらいのでしょうか。
ドゥ
そうですね。2ポット4ドリッパーでドリップしようとすると、やはり両手のバランスのとりづらさが課題です。自由の利く左手が速くて、右手が少し遅くなるのです。ドリップはお湯のスピード調整がとても重要なカギを握っているため、両手を使う抽出の場合は右手でも速さのコントロールができるようトレーニングが必要です。
加藤
なるほど。もしドリッパー側でお手伝いできることがあれば、遠慮なくおっしゃってください。細かな調整はもちろんですが、世界大会でアピールできるオリジナルカラーなどもご協力できると思います。
ドゥ
ありがとうございます。色々とアイデアがありますのでぜひ相談させてください。
師匠との出会い。そして世界へと舵を切った。

加藤
ところで、ドゥさんはバリスタになられて何年経ちますか?
ドゥ
2010年に20歳でカフェの仕事を始めましたので、8年になります。
加藤
以前からバリスタになりたいと思っていたのですか?
ドゥ
いいえ。高校を卒業して、2年ほど普通の会社で会社員をしていました。けれど、その生活に面白みを感じることができなくて、新しいステップを探して1ヶ月の旅に出ました。
放浪の旅が終わって、さあどうしよう? と悩んでいた時にウェイボ(新浪微博:中国版のtwitter) で面白そうなカフェのPRが目に留まって……それは私がフォローしている男性アイドルのPRだったんですが(笑)。調べてみるとバリスタを募集していました。
アイドルにつられて面接を受けたらとんとん拍子で決まり、そこからバリスタデビューです。軽い気持ちで応募をしたのですから、振り返ってみると不思議な人生だなと思いますし、今となっては仲間内でも笑い話です。
加藤
普通のOLだったのに、ひょんなきっかけから世界で戦うバリスタに。すごい話ですね。
ドゥ
バリスタになってからは11年経ちますが、世界を意識し始めたのは2013年のことです。最初のお店を辞め、UNiUNiに入店して初めてジェルミーさん(ドゥさんが働く中国・南京のカフェ「UNiUNi」オーナー)にお会いした年です。

ドゥ
当時、ジェルミーさんはワールドバリスタチャンピオンシップ(ブリュワーズカップと並ぶ世界的なバリスタの競技会)の世界大会に向けて特訓していました。高いレベルでコーヒーに打ち込むジェルミーさんの姿を見ながら、知らず知らずのうちに世界で戦うイメージが自分の中に形作られてき、自然と自分も挑戦したい、もっと学びたいと思うようになりました。
それまで自己流でやってきたことも、ジェルミーさんに理論から教わり、徹底的に学びなおしました。そして、2015年に中国バリスタチャンピオンシップ3位入賞、2016年にはブリュワーズカップで初めて世界大会に出場しました。今年の世界大会は2度目の参加となります。
加藤
チャンピオンになってから、変わったことはありますか?
ドゥ
自分のスタンスが変わることはありません。ただ、店を訪ねてくださったお客さまから「チャンピオンのあなたにコーヒーを淹れてもらいたい」とご指名を頂くことは多くなりました。店にとっても良い影響があるのなら、もっと世界で活躍できるように頑張ってみたいという気持ちになっています。
一歩一歩踏み出してより良い世界にたどり着く。バリスタはそんな仕事。

加藤
ドゥさんが目標とされている方はいますか?
ドゥ
師匠はやはりジェルミーさんです。彼は佇まいからオーラを感じさせる人。自分にはまだまだ追いつけない存在です。彼の思想を吸収して、もっともっと勉強したいと思わされます。
他にも何人か尊敬するバリスタがいますが、共通しているのはコーヒーを売ることだけを目的してはいない、というところでしょうか。皆さん、コーヒーを通じて社会貢献につながる活動をされています。自分もトレーナーとして若いバリスタを教える立場にいますが、コーヒーのことだけでなく、人生のあり方を伝えられる存在になりたいと先輩方の背中を見ながら感じています。
加藤
人生のあり方とは?もう少し詳しく教えて頂けますか。

ドゥ
バリスタは年齢層も若いですし、特に中国ではまだまだ社会的地位が確立されていない職業です。つまり給料も低いです。でも私は自分の人生の計画において「いつまでバリスタができるだろう?」と考えたくないんです。毎日新しいチャレンジをして、何か新しいものを収穫して、自分を成長させていきたいし、それだけに集中していたい。
コーヒーというのは、いろんな世界とつながれるツールです。たとえば哲学や物理学など、若い時には興味すら持たなかった領域を面白がっている自分に出会えます。難しいと思うこともあるけれど、乗り越えたら自分の淹れるコーヒーが美味しくなる瞬間があるんです。
努力をして成果を出すという達成感を得たら、また次のステップが見えてきます。バリスタというのはそんな素晴らしい職業なんだ、ということを伝えたいですね。
加藤
ありがとうございます。最後に、次の世界大会に向けて意気込みを聞かせてください。
ドゥ
バリスタにとって、コーヒーを淹れる技術はもちろん大切です。けれど、その「技術」に占める「コミュニケーション」の割合は少なくないと私は考えています。淹れる人と飲む人の間に生まれるリラックスした空気感を、自分なりにきちんとデザインしたいのです。
世界大会という大舞台では、ジャッジをする方も選手以上に緊張されるそうです。競技の大会とはいえ、私が提供したいのは良いサービスです。いくら美味しいコーヒーを淹れても心地よく飲めなければ、真の評価にはつながらない。
「この人のコーヒーを味わいたい」と思ってもらえるような、バリスタとの相性の良さを感じさせるような、ゆったりとくつろげる空気を作ることを一番大切に考えたいと思っています。


いかがだったでしょうか。
雑談をしているときのドゥさんは笑顔がチャーミングな女性ですが、コーヒーについて語る真剣な表情からは、世界で戦う厳しさを感じさせました。このような方にORIGAMIを使っていただけるのは本当に誇らしいことです。
この取材の翌日、ドゥさんはORIGAMIの工場見学に訪れたのですが、そのときの様子はこちらの記事からご覧ください。
次回は、ドゥさんが所属するUNiUNiのオーナーが登場します。どうぞお楽しみに!

ドゥさんが所属するUNiUNiは、中国の南京にある本格ドリップコーヒーとエスプレッソコーヒーを提供するカフェです。外観もすごくオシャレで、お店の前で写真を撮る人も多いとか。南京に訪れた際はぜひお立ち寄りください。
UNiUNi web
https://weibo.com/u/5121061202

加藤信吾
Kato Shingo
ORIGAMIのブランド設計に外部パートナーとして携わるなかで、様々なバリスタと出会い、各地のスペシャルティコーヒーに感動し、気がつけば一日2杯のコーヒーが欠かせない日々を送る。
twitter:@katoshingo_
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