こんにちは。ORIGAMI JOURNAL 編集部です。
今回のゲストは、横浜市の日吉で自家焙煎コーヒー豆を販売されているNOBLE COFFEE ROASTERS(以下ノーブルコーヒー)のオーナー / バリスタの古賀さんです。
古賀さんは、元々大手チェーンの飲食店で勤務したのち2013年にノーブルコーヒーをオープン。以来、日吉で自家焙煎の豆の販売とカフェの営業を続けています。
「コーヒーを愛して、カフェに憧れて、お店をはじめたわけじゃないんです」と言う古賀さん。彼のお店づくりには、明確なビジネスの視点がありました。
ノーブルコーヒーロースターズ
オーナー / バリスタ 古賀
神奈川県横浜市の日吉駅から徒歩2分。日吉では珍しい自家焙煎を行うお店として2013年に開業。独学で培った焙煎技術と、大手チェーン店での店舗運営経験を生かして、地元のコーヒー好きに愛され続けるお店を目指している。

独立できる道を探したら、コーヒーだった。

加藤
もう何度もお会いしていますが、こうやってちゃんと話をするのは初めてですね。
古賀
そうですね、初めてお会いしたのは展示会でしたか。
加藤
はい。長くORIGAMIをご愛顧いただいて本当にありがとうございます。
古賀
おかげさまで評判いいですよ。
うちの店の商品は、主にコーヒー豆、ドリンク、フードの3つに分かれるんですが、それ以外の物販の大部分をORIGAMIが担ってくれています。この棚もすごくいいです。


古賀
お店に入って、すぐに目に入るじゃないですか。みんな可愛いとか綺麗って言ってくれますね。コーヒーを飲んだあと、お土産にカップを買って帰られる方もいらっしゃいます。次はギフト用の販売も検討しているんですよ。
加藤
古賀さんは以前から物販について考えられていましたよね。通販なども検討されてるんですか?
古賀
うちの店レベルじゃ、通販は多分売れないですね。やっぱりこの分野は大手が強い。こんな日吉の片隅のお店を選ぶ理由がないです。
加藤
なるほど。大変現実的な判断をされているんですね。
古賀
この取材でこんなことを言っていいのかわかりませんが……僕はコーヒーを愛しているからカフェを開いたわけじゃないんですよ。
前職は大手の飲食チェーンで働いていたんですが、ずっと独立したいと考えていました。そしていざ独立しようとしたときに、自分ができること、経験が活かせることは何だろうと振り返ったら、それがカフェだった。そんな動機なんです。
もちろん、コーヒー豆や焙煎にはこだわりますよ。美味しいものをお届けしたい。でも、そこに命をかけるというよりは、どうやったら長くお店を続けられるかをずっと考えていますね。
選ばれる豆を売る。

加藤
どうしたら長くお店を長く続けられるかというのは、多くのオーナーさんが気になる話題だと思います。古賀さんが心がけていることについて教えていただけませんか?
古賀
僕の偏った考えなので、あまり参考になるとは限りませんが……。
まず、フードはできる限りやらないようにしています。事実うちではサンドイッチ、ホットドッグといった本当に簡単なものだけしか提供しませんし、将来的には無くしたいと思っています。フードを充実させるほど、喫茶の色が強くなって、コーヒー豆が売れにくくなるように感じるんです。
加藤
では、一番売りたいのは?
古賀
コーヒー豆です(キッパリ)。
加藤
理由を教えてもらえますか?
古賀
僕は以前大手の会社にいたので、喫茶で対抗するのは難しいことがよく分かっています。フードを揃えてゆっくり寛いでもらうには人手が足りないし、雰囲気づくりも大きいところには勝てません。やっぱり、大手のブランド力って想像以上に強いですよ。では、逆に大手ができないことを考えると、その場での焙煎なんですよ。
いい豆を、新鮮な状態で売る。これだけに絞るなら、生き残る可能性があるんじゃないか……と思っています。あくまで僕の考えですが。
加藤
なるほど。その分、豆や焙煎にこだわっていくんですね。
古賀
そうですね。補足をすると、別に好きな豆とか、評判がいい豆というわけじゃなく、売れる豆、お客さまに選んでいただける豆を提供することにこだわっています。
うちは日吉で一番高い値段で豆を売っているんですが、その分購入のハードルが高い。どうしたら売れるかを常に考えています。たとえば焙煎では、多少風味の寿命を短くしても、豆の一番美味しいところを楽しんでもらえるように挽いたりですね。
開店して5年経ちますが、ありがたいことに着実に豆の販売数は増えています。
自分のできる範囲で、お店を長く続けるために。


加藤
古賀さんの今後の展望といいますか、お店をこうしたいって思いがあればぜひ聞かせてください。
古賀
拡大して多店舗展開します! ……と、大きな夢を語れるといいんですが、これまで話をした通り、僕の考えはまったくの逆で。どんどん小さくしていきたいと考えています。
理想的には5坪くらいの敷地に焙煎機を置いて、ドリンクはテイクアウトのみ。豆の販売だけでやれれば一番です。
敷地が広いと家賃が高いし、カフェを拡大するには一人ではオペレーションに限界がある。かといって人を増やせば人件費がかさむ。そう考えていくと、小さな豆屋が一番生き残れる可能性が高いんじゃないかと思うんです。
加藤
すごくビジネス視点で考えられているですね。
古賀
夢のない話ですいません(笑)。
もっと夢のない話だと、僕がこの場所(日吉)にお店を出したのは、横浜の大きな駅で日吉だけが自家焙煎のお店がなかったのが理由なんですよ。競合店がいない。それでここを選びました。この駅で降りたこともなかったのに。
加藤
そうだったんですか。それは初耳でした。
古賀
独立するとき、僕は、なるべく長くお店を続けたいと思いました。そのために無理をしたらダメなんじゃないかと。だから競合は避けるし、大手とは戦わない。リスクのある拡大もしません。
あと、常にベストパフォーマンスが出せるようにしっかり寝ます。7時間は最低寝るんですよ。飲食店の経営者としては寝すぎかなと思ったりもするんですが、僕自身がちゃんと健康じゃないと続けられないですからね。
とにかく、自分のできる範囲で、お店を長く続けていく。それが僕のやり方です。
加藤
ありがとうございます。今日はとても楽しかったです。
古賀
こちらこそありがとうございます。


いかがだったでしょうか。
古賀さんのお話は、長くお店を続ける、という商売の本質を感じさせるものでした。同時に、今回のようなビジネスの視点で話された方は初めてだったので、大変刺激的な取材になったと感じます。 それでは次回もお楽しみに!

今回取材させていただいたノーブルコーヒーさんは、神奈川県横浜市の日吉駅から徒歩2分の場所にあります。挽きたての新鮮な豆をお楽しみいただけます。入ってすぐ左手にあるORIGAMIの棚にもぜひご注目ください。

加藤信吾
Kato Shingo
ORIGAMIのブランド設計に外部パートナーとして携わるなかで、様々なバリスタと出会い、各地のスペシャルティコーヒーに感動し、気がつけば一日2杯のコーヒーが欠かせない日々を送る。
twitter:@katoshingo_
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