コロナ禍のピンチをチャンスに。新しい形で成功を収めた抹茶ラテアート大会「Japan Matcha Latte Art Competition」

コロナ禍のピンチをチャンスに。新しい形で成功を収めた抹茶ラテアート大会「Japan Matcha Latte Art Competition」

抽出舎/代表取締役・茶リスタ 小山和裕

2021.01.14

「世界に刺激ある日本茶文化を」という思いのもと、日本茶業界を盛り上げるべく2019年に誕生した抹茶ラテアート大会「Japan Matcha Latte Art Competition」。2020年は新型コロナウィルスの影響により一時は開催が危ぶまれたものの、10月1日に第3回大会が無事開催されました。

日本茶業界が大きな打撃を受け数々のバリスタ向け大会の開催も見送られるなか、今だからできる試みを盛り込みながら新しい大会の形を切り開いた実績は、業界にも大きな勇気を与える結果となりました。

大会を主催するのは、日本茶スタンド「Satén japanease tea」の運営を行なう株式会社抽出舎。代表で“茶リスタ”の小山和裕さんに、今回の大会に込めた思いや今後に向けた期待を伺いました。

◆小山さんの過去のインタビュー記事はこちら
https://with-barista.origami-kai.com/with_barista/saten/

─新型コロナウィルスの影響により5月に開催が予定されていた第3回大会が延期となりましたが、10月に無事開催されましたね。不安や制限もさまざまある中での開催となり、勇気が必要だったのではないでしょうか。

そうですね。「Japan Matcha Latte Art Competition」は、まだ誕生して間もない大会です。出場選手も増え、せっかく少しずつ注目を集めるようになってきたにもかかわらずあのまま開催できなければ、来年以降の開催もピンチになってしまうのではという懸念があって……なんとか開催したいという思いがありました。それならばピンチをチャンスに変えて、今だからこそできる新しい取り組みにもチャレンジしながら、少しでもお茶業界、バリスタ業界を盛り上げられたらと思ったんです。それで、世の中が少し落ち着いてきたタイミングで開催を決断しました。

─無観客での開催となりましたが、当日はSNSでライブ配信をされるなど、まさに新しい試みが盛りだくさんでした。

インスタライブやYouTubeで大会の模様を配信したので、画面の向こうの人を意識する場面が多かったですね。会場にいる選手と画面の向こうの視聴者との温度差を埋められるようエンタメ性をキープしながらの滞りない進行で、テレビ的な構成になったかと思います。解説も入ってもらったので、選手の意図や、その時何が行われているのかをリアルタイムで伝えてもらうことができました。業界関係者に正しい情報を伝えるだけでなく、純粋に興味本位で覗いてくれる視聴者の方にも、臨場感とわかりやすさを感じてもらえる内容になったのではと思います。

ライブ配信に関しては、本当にいろいろなご感想をいただきましたね。「会場の空気感、臨場感を味わえた」「動いている姿を見ることで、選手のみなさんの人となりや雰囲気まで伝わってきた」といった声をいただいたり。特にうれしかったのが、「バリスタの人たちってやっぱりかっこいいよね」という声。日本茶を扱っている姿を見て、純粋に「かっこいい」という印象を持ってもらえたら、お茶業界にとってもプラスの刺激になると思います。大会後にも、お茶業界、コーヒー業界の方から「どうやって大会を運営したのか知りたい」「当日の様子を見てみたい」といった声もたくさんいただいているんですよ。当日収録した映像は、編集してダイジェスト動画として公開しています。

◆大会当日の様子をまとめたダイジェストムービーはこちら

─例年開催されているバリスタ向けの大会も続々と中止が決まるなかで、今だからこそできる大会の形を模索し、成功させた実績は、業界にも大きな勇気を与えました。

今回は本当にチャレンジでしたが、ひとまず形にできたからこそ、今後も状況に応じてさらに質の高い大会にすることができるはずです。今回は、無観客の状態でいかに会場の雰囲気やバリスタの息づかい、臨場感を伝えられるか検討した結果、ライブ配信という形でエンタメ性を高めることができ、結果的に「かっこいい」という声もいただくことができました。

今後、またお客さまを会場に呼べるようになったとしても、ライブ配信や音声解説を続けたり、さらに新しい要素も模索していくことで、お茶関係者はもちろんのこと、一般の方にも日本茶に興味を持ってもらったり、バリスタに憧れを抱いてもらうきっかけを作っていけたらうれしいです。お茶業界は、新茶の時期にコロナ禍がぶつかったこともあってかなり厳しい状況に立たされています。だからこそ、我々の大会の盛り上がりを通じて、日本茶の裾野をさらに広げていきたいと考えています。

─小山さんは、日本茶スタンド Satén japanease teaの運営や、現代の生活によりそう茶器のプロデュースなどもされています。「人々の日常に溶け込む日本茶を届ける」という意志が、大会に込められているように感じます。

そうですね。おかげさまで徐々にですが、急須で入れる以外のお茶の世界観も広がりつつあります。近年では、順位をつけることに対して疑問をもたれる風潮もあって、大会で順位をつけることにマイナスな意見をもらうことも時々あるんです。でも、こうやって大会を続けることで、技術革新とまでは言えるかわからないけれど、バリスタやお茶業界、茶器のメーカーさんなど、さまざまな方面に技術の追求が広がり、深まっていきます。参加者や大会関係者以外にも、ライブ配信や大会レポートを見た人にとって、新しい観点をもつきっかけになるかもしれませんし。だからこそ、今後もお茶業界を多面的に盛り上げ、裾野を広げるためにも、大会を開催したり、店舗の運営を続けながら、茶器の開発などにも力を入れていけたらと思います。

決勝に出場した選手のみなさん

ピンチをチャンスに変え、新しい大会の形を切り開いた「Japan Matcha Latte Art Competition」。お茶業界のみならず、コーヒー業界や多くのバリスタにも勇気を与える挑戦でした。

現代の日常にマッチする形で日本茶の魅力を発信し、業界を盛り上げようとする小山さん。これからも、大会の開催やお店での取り組みなどを通して、新しいお茶の世界を見せてくれるはずです。

Photo : Akane Uozaki

◆Japan Matcha Latte Art Competition 
https://www.jmlc.jp/

◆Satén japanease tea
https://saten.jp/

笹沼杏佳

Sasanuma Kyoka

ライター/エディター。Webや雑誌、企業Webサイトなどでジャンルを問わず執筆。その人が夢中になっていること、好きなこと、頑張っていることについて聞くインタビューと、質感や触り心地など、感覚的な魅力を言葉にして伝えるのが好き。

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