世界のバリスタが唸る豆「ゲイシャ」で知られるナインティ・プラス社。そのこだわりの秘密と、希少コーヒーの新しい愉しみ方[後編]

世界のバリスタが唸る豆「ゲイシャ」で知られるナインティ・プラス社。そのこだわりの秘密と、希少コーヒーの新しい愉しみ方[後編]

ナインティプラス Joseph Brodsky

2021.11.06

最高の品質と革新的で多彩なフレーバー、そして持続可能なコーヒー界の実現に向けた数々の取り組みなどから、スペシャルティコーヒー界のパイオニアとして世界に知られるナインティプラス®️社。
本インタビューでは、創業者のJoseph Brodskyさんにコーヒー作りにこめるこだわりや、希少コーヒーの楽しみ方についてお話を聞いています。

後編では、ナインティプラスとORIGAMIの共同開発によって生まれた新しいブリューセットの話題と、Josephさんが思い描くこれからのビジョンについてお届けします。

──今回、ORIGAMIと共同でスペシャルティコーヒーに合うブリューセットを開発することになった経緯を教えてください

ナインティプラスのコーヒーは業界的にも新しいことから、まだまだマーケットを広げる余地があると感じています。
スペシャルティコーヒーの需要や知名度は高まっているようですが、それでも人々はそのコーヒーにどれほどの価値があり、どれほどの労力のもと生み出されているのか理解しきれているとはいえません。
提供方法や販売システムについてもこれから改善できるポイントがいろいろあると思っています。
そこで、より多くの人にスペシャルティコーヒーのおいしさを最大限に味わってもらえるようにしたいと考え、前からやりたいと思っていた10gブリュワーズシステムを開発することになりました。

──ORIGAMIのことはどのような経緯で知ったのでしょうか?

オレゴン州で行われた世界選手権で優勝した友人である中国の杜嘉寧(ドゥジャーニン)さんがオリガミを使っていて、彼女の紹介でした。もちろんそれ以前からORIGAMIのことは知っていましたが、実物を目にしたとき、デザインがとても美しいと思いました。
コーヒーを抽出するツールとして優れているのはもちろんのこと、私にとってコーヒーは感覚的な体験がとても大事だと思っているんです。
見た目の美しさからも気持ちを高めてくれる、すばらしいツールだと感じました。
それでORIGAMIチームに連絡をとり、様々な製品を試させてもらうことができ、とても気に入りました。以来、私はORIGAMIの製品だけでコーヒーを淹れています。

──ブリューセットの開発には約2年かかったと聞きました。大変だったことはありましたか?

新型コロナウイルスの影響で私自身は結局日本に行くことができず、スケジュールの面では苦労がありましたね。
それでもオンラインによるミーティングでとても有意義な話し合いができ、スムーズに開発を進められました。制限があるなかでも、ORIGAMIチームとともに最高の経験ができたと感じています。
最終的にできあがった製品にも、とても満足しています。

──今回のブリューセットで、コーヒー豆の容量を10gに設定した理由を教えてください。

ナインティプラスのコーヒーは、それ以上の量だと多くの場合一人では飲み切ることができません。
というのも、一般的なコーヒーと異なるフレーバーの強いテイスティングコーヒーなので、一度にたくさん飲むものではないのです。
そのため1回の抽出で10gの豆を使い、150mlのコーヒーを楽しめる形にしました。
150mlを一人でゆっくり味わってもいいですし、少量ずつ誰かとシェアしてもいいと思います。
私たちは、人が集まるとそうやって少量ずつ分け合うスタイルでコーヒーを楽しむんです。
そんな体験もおすすめしたいからこそ、セイバーカップという、4つの小さなカップもセットで販売することにしました。

高価なスペシャルティコーヒーも、こうやって4人でシェアすれば一人あたりの価格はそれほど高価ではなくなります。1kg1万円のコーヒーは高いと感じるでしょうが、10gで1杯飲むなら100円です。
それをさらに4人でシェアすれば、一人あたりたったの25円ですよね。
「希少なコーヒーを飲んでみたいけれど、高くてなかなか買えない」と感じていた人に、1杯あたりで換算すれば決して手の届かないようなものではないと気づいてもらえればと思います。

私自身、ずっとこういったツールがほしいと思っていて、今回実現することができ本当にうれしいです。
コロナウイルスの驚異が収束したら、このセットを持って世界各国を訪れ、私たちが普段楽しんでいるようなコーヒーのシェアスタイルを、多くの人に広めたいと思います。

──ナインティプラスのコーヒーを初めて飲む人に、どんな飲み方をおすすめしたいですか?

私たちはみんなでコーヒーをシェアするとき、2種類のコーヒーを淹れて、1人に2つのカップを渡して飲み比べを楽しみます。
それが、スペシャルティコーヒーの醍醐味でもあるんですよね。
まったく異なる味のコーヒーを飲み比べると個性がよく理解でき、それぞれの味をよりオープンな心で楽しむことができます。
ナインティプラスのウェブサイトでも、ペアで飲み比べるのにおすすめの商品を紹介しているんです。
ぜひ、2種類の豆を買って飲み比べてみてほしいなと思います。
ブリューセットのカップには、黒曜石をイメージした黒色と、玄武岩をイメージしたグレーの2色があるので、それぞれの色のカップに違う味のコーヒーを淹れて楽しんでもらいたいです。
私たちのコーヒーによるアロマティックな体験を、ぜひ誰かと一緒にシェアして、香りや味を分かち合ってみてください。

私にとって日本は大好きな国ですし、彼らの美的センスや細部へのこだわりを尊敬しています。
日本人は、ひとつのことを深く学ぶ姿勢を持っているところもすばらしいですね。
私自身もスペシャルティコーヒーというひとつのものに打ち込んできたので、とても共感できます。
そういう意味でも、ナインティプラスの商品は日本の人々にとてもマッチすると思います。
専門性が高く信頼できるものを買いたいと思う人が多いでしょうし、面白い化学変化を生み出せるはずです。

──この試みをきっかけに、スペシャルティコーヒーの裾野がさらに広がるといいですね。

コーヒーの生産者たちにも還元されていくことを願っています。
小さなカップでの1杯に、いつものコーヒーよりもほんの少しだけプラスで投資をしてもらうといった積み重ねが、生産者たちの賃金や生活の向上につながっていくと考えています。
コーヒー生産にかかわるすべての人に、モチベーションを持って働き続けてもらえるようになってほしいです。

また、先程も少しお話しましたが(前編)、私たちはコーヒーと森林が共生できる農法を大切にしています。
それを実現するには、実の収穫から輸出に至るまでに非常にたくさんの手間をかける必要があり、大量生産品では2日で終わるものに対して、我々は3、4ヶ月という時間やお金を投資しているのです。
スペシャルティコーヒーの価格の裏付けとなるこうした手間やコストを理解してもらうとともに、希少なコーヒーに投資をすることが未来のコーヒー農園を作る手助けになることを知ってもらうためにも、アピールを続けたいと思います。

──どのようにアピールを続けていくか、イメージしていることはありますか?

まずは地道に、ナインティプラスの商品を通じて特別な体験をしてもらい、一人ずつ、少しずつでもコーヒーへの価値観を変えていきたいと考えています。
これまでにないことを成し遂げようとする起業家にとって難しいのは、これから実現するもの、つまりまだ実現できていないことの価値を人に伝えること。
本人は四六時中そのことに思いを巡らせているのですばらしさを確信していても、他者に理解や共感してもらうのは難しいです。
1日1歩のペースでも、小さなステップを積み重ねて、人々に思いを伝えることが大切だと考えます。

それと、今後はコーヒー生産者自身が顧客と直接つながる機会を増やしていくことも重要だと思います。
なぜなら、仲介業者やロースターが間に入ると、ときには農園が掲げる考えや思いとズレが生じてしまうことがあるからです。
コーヒー業界の次章として私たちが大切にしたいのは、生産者の言葉を紡ぎ出し、消費者に直接伝えることなのです。
今後も、私達の商品を通して、消費者のみなさんに農園と直につながれるような機会を提供していきたいと考えています。

──ビジネスについてはどのような展望を持っているのでしょうか。

今の段階では、規模の拡大は重要視していません。
これからやりたいと考えているのは、私たちが持つ1000ヘクタールの農園を今後3から5年で最大限発展させ、コーヒーにまつわるさまざまな体験してもらえる場所を作ることです。
その後は、コーヒー農園を作りたいという人々をコンサルできるようなプログラムを提供したいです。
世界各地の生産者が、私たちが培ってきたノウハウを学び、広めていくための支援をしたいと思います。

それと、ビジネスとは少し違いますが、気候変動への対応など環境への配慮にも引き続き力を入れていきます。
コーヒー生産にかかわる人たちには、ほんの少しだけ生産量を減らして、ほかの植物を一緒に植えるという方法を今から始めてほしいと伝えたいですね。
利益の面では少し犠牲を払わなければならないかもしれませんが、こういった取り組みがいつか気候変動から自分たちを守ることにもつながるんです。
実際に私たちの農園では、周囲の木々が生む日陰のなかでコーヒーを育てるという農法のおかげで、厳しい暑さからコーヒーを守ることができています。
また、ハリケーンの被害を受けても周りにたくさんの植物が生えているおかげで雨水の吸収がスムーズになり、より早く元の状態に戻れるというメリットもあるのです。
もちろん、少しの利益の低下がビジネスの存続に影響を与える恐れもありますが、だからこそマーケティングとセットで、これからの環境変化への対策を考えていかなければなりません。
今後も業界全体として柔軟にアイディアを生み出していくために、人々はもっとクリエイティブになる必要があると感じています。

──これからも長期的に、よりよい製品をともに開発できればと思っています。ORIGAMIとのコラボレーションが、ナインティプラスの思いを形にするためのお手伝いになればうれしいです。

今回のブリューセットには「10.1」という名前が着いています。これは今後もアップデートを重ねて「10.2」「10.3」と新たなバージョンを生み出していけたらという思いも込めているんです。
ぜひ今後も一緒に、すばらしい製品を作っていけたらいいですね。

ナインティプラス
https://ninetypluscoffee.com/

テラサキ アヤコ

ayako terasaki

ORIGAMIやSERVESのEC運営や商品企画を担当。土とろくろが好き。

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