「コーヒーは難しくない」。船橋コーヒータウン化計画の発起人が語る、コーヒーの魅力

「コーヒーは難しくない」。船橋コーヒータウン化計画の発起人が語る、コーヒーの魅力

ドトールコーヒー船橋駅南口店オーナー/株式会社Philocoffea共同代表 梶 真佐巳

2018.12.28

古くより商業の地として栄えてきた船橋。この街で今、コーヒーの需要が高まり、コーヒーを巡る文化が盛り上がり始めているといいます。今回お話を伺ったのは、その大きなうねりを巻き起こしている仕掛け人、「船橋コーヒータウン化計画」を立ち上げた梶真佐巳(かじまさみ)さんです。

2016年に船橋駅前へオープンしたドトールコーヒーショップ船橋駅南口店は、全国の店舗で初めて、そして唯一ハンドドリップ提供を始めましたお店。170もの席が並ぶ店舗へ一歩足を踏み入れると、この街へいかに多くの人が集まってくるのかを実感させられます。

この斬新なスタイルで営業を始めたのが、船橋コーヒータウン化計画を立ち上げることになる梶さんでした。船橋コーヒータウン化計画は、年に数回、船橋を拠点とするコーヒーショップや焙煎店が集まる「船橋コーヒーフェスティバル」を開催することが主な活動内容です。

今回は梶さんに、船橋コーヒータウン化計画により今どのようなことが起こっているのか、また船橋のコーヒー文化をどう捉えているのか、お話を伺いました。

フランチャイズ店が、どうしたら地元の力になれるのかを考えた。

-梶さんが船橋コーヒータウン化計画を始めたのは、何がきっかけだったのでしょう?

梶さん:船橋に新旧問わず多くのコーヒーショップがあることを知り、まだまだその存在やカルチャーが人々の目に留まっていない状況を変えたいと思いました。それぞれが素晴らしいお店なのだから、もっと人々に活用されても良いはずだと。一見「地元」とは接点が薄そうなフランチャイズ店が、どうしたら地元に密着し、盛り上げていけるかを考えました。

そこで、皆フラットな立場でコーヒーフェスティバルを開催することで、それぞれが学び合う関係を築いていければと考えました。

-ある意味地域を俯瞰して見られる立場だからこそ始められた、という面もありそうですね。船橋コーヒーフェスティバルは今回で3回目の開催ということですが、どんなことを心がけていらっしゃいますか。

梶さん:船橋コーヒーフェスティバルでは、地元のコーヒー関係店の出店に加え、来場者にコーヒーを日常的に楽しんでもらえるよう、自宅でも淹れられるようにワークショップなども開催しています。多くの方にコーヒーの魅力をお伝えできるよう、一日に何度も催しを行なっています。

-実際に開催を続けてみて、何か変化はありましたか?

小さいお店にとって、コーヒーフェスティバルへの参加は、潜在的な顧客について知り、日頃の営業をよりよくしていくきっかけになっているようです。今回で3回目の開催となるのですが、皆さんかなり売上実績を伸ばしています。

-このプロジェクトは、World Brewers Cup 2016の世界チャンピオンで馴染みの仲だった粕谷晢(かすやてつ)さんと組んで立ち上げたということですが、どんな経緯でご一緒することに?

会場に飾られた、粕谷さんのフラッグ。

梶さん:僕が粕谷に出会ったのは、もう8年ほど前のことになります。彼はWorld Brewers Cupでアジア初の世界制覇を達成。世界チャンピオンの称号を得た今は、アジア各地や日本国内で次世代バリスタの育成や、一般消費者へコーヒーの魅力を発信しています。

僕たちが親しくなったのは2011年、共通の知人を介して、東日本大震災のボランティア活動で石巻市を訪問したことがきっかけです。

当時の彼は都内でITコンサルタントとして勤務しており、コーヒー業界とはかけ離れた日常を送っていました。ところが1型糖尿病を患い退社・入院を余儀なくされます。そこで、カロリーを摂らずに済む飲み物としてコーヒーに出会ったのがきっかけで、コーヒーの世界へ飛び込んでいくことになります。それから自分でコーヒーを淹れるようになり、大会で賞を取るまでになったんです。

粕谷は船橋コーヒータウン化計画を立ち上げる際は一緒に発起人となってくれましたし、この計画を形にした店舗、RUDDER COFFEE シャポー船橋店でも立ち上げに協力してくれ、トレーニングコーチをしてくれています。

「船橋コーヒータウン化計画を形に」ということで生まれた船橋駅直結のRUDDER COFFEE シャポー船橋店。

-実際に船橋コーヒータウン化計画を始める際、何か苦労はありましたか。

梶さん:地元との繋がりがないなか、計画を立ち上げるのは大変でした。そこで、地元誌『マイフナ』の編集長・山崎健太郎さんがだいぶ助けてくれましたね。この方は船橋に新しい店や場所ができたり、リニューアルしたりした際には必ず足を運んで取材する人で、私と一緒にコーヒー関係店をまわってくれ、この計画について話をしていってくれました。

地元の珈琲豆焙煎店、アダチコーヒーさんも山崎さんの協力で集まった出店者のひとつ。

人が集まる船橋の可能性を、最大限に伸ばしていきたい。

-船橋は古くから宿場町として人と物の交易が盛んだったといいますが、梶さんご自身はこの街をどのように捉えていますか?

梶さん:船橋は昔から商業は盛んで人口も多く、活気がありますね。JR船橋駅の乗客数も全国有数の多さだそうです。人が集まる分、何かが広まった時のパワーの大きさはとても強いものだと思います。

船橋は良くも悪くも東京の中心部への対抗心やプライドがあるので、同業者同士の結びつきが強いという特徴があります。一次産品や加工業者、サービス業のみなさん同士の密接度が高いんです。飲食店でも、地元の食材を使っていたりと、協力し合う風潮がありますね。

-なるほど。そんな船橋でご活動される意義をどう考えていますか?

僕たちはここで何かを形にしていくことを「ないものづくり」と呼んでいます。船橋コーヒータウン化計画によって生まれる人の動きが、街や産業、企業の境界線を取り払っていったら良いなと考えています。

船橋コーヒータウン化計画には規約もルールもありません。皆がフラットで、自由に出入りできるようなラフな状況を作っています。ここで生まれたコーヒー店同士や、お客さんがたとの繋がりが、街の大きな力に繋がっていったら良いなと思っています。

船橋コーヒーフェスティバルでは、一日に何度もコーヒードリップのワークショップが行われる。
今回ワークショップを担当したのはウォームハートコーヒーの井相田奈美子さん。梶さんも自らステージに立つ。

あらゆるところにコーヒーを届けていきたい。

-3年目となり、今後はどのような方向性でご活動されていこうとお考えですか?

梶さん:コーヒーを通じた、新しい体験を届けていきたいですね。そしてコーヒーは難しくない、自由で楽しいものだと多くの人に知ってもらいたいです。そういう意味で、船橋コーヒーフェスティバルの開催、そこでのコーヒーワークショップは今後も続けていきたいです。

-これからのコーヒーの楽しみ方について、何かアイディアなどがあれば教えてください。

梶さん:コーヒーの食材としての魅力や、お酒としての楽しみ方も広げていきたいと考えています。今はコーヒーカクテルの開発を進めているところです。コーヒーに含まれる、フルーツと同じ成分を生かした、新しい味わい方を色々な人に知ってもらえたら。そうして、日常生活のあらゆるところにコーヒーの魅力を届けていきたいと思います。

 

いかがでしたでしょうか。プロジェクト立ち上げから3年が経ち、少しずつコーヒー店や人々の繋がりができ始めているという船橋。次の船橋コーヒーフェスティバルは2019年11月開催予定だそうです。機会があればぜひ立ち寄って、船橋という街の持つエネルギーと、コーヒーを巡る街の変化の瞬間を目の当たりにしてみてください。駅からすぐのドトールコーヒーショップ船橋駅南口店とRUDDER COFFEEは、いつも営業していますよ。

船橋コーヒータウン化計画
http://coffee-town.jp/

ドトールコーヒーショップ船橋駅南口店
https://www.facebook.com/dcs.funabashi/

RUDDER COFFEE シャポー船橋店
https://www.facebook.com/RUDDERCOFFEE/

木村びおら

Viola Kimura

出版社勤務を経てエディター/ライターに。雑誌や書籍、WEBなどで編集・執筆をするほか、イベント企画やPRなども手がける。現在は医療専門誌の編集の傍ら、教育、福祉、デザイン、ものづくり、食などのコンテンツ制作に携わっている。写真家の夫と2人の子どもと4人暮らし。

このライターの記事

PICK UP