ORIGAMIを探しにいこう。Vol.3 扱いやすくてコーヒーがおいしくなる、カップができるまで。

ORIGAMIを探しにいこう。Vol.3 扱いやすくてコーヒーがおいしくなる、カップができるまで。

光洋陶器株式会社 専務取締役 / 加藤伸治

2019.10.17

ORIGAMIをつくる人たちに、「ORIGAMIの何がすごいのか?ORIGAMIってどんな風に作られているのか?」などの疑問をなげかけ、ブランドの魅力を紐解いていく連載企画。第3回は、コーヒーを飲むときの器であるカップです。

ORIGAMIのカップの魅力は、なんといっても用途に合わせて使い分けられる豊富な種類とカラーバリエーション。このカップどのようにして生まれるのかに迫りました。解説は光洋陶器の専務取締役 加藤伸治さんです。

バリスタにとって理想的なカップを目指す。

かわいいカップですね。でも、パッと見は一般的なものと変わりがない気がしますが……どこに特徴があるのでしょうか?

一番の特徴は、カップの内側の厚みです。従来、カップの内側の厚みは製造現場であまり注目されてきませんでした。外観の曲線が決まれば、製造側の都合で焼成時に歪まないよう設計し、内側の厚みを決める程度。しかし、このORIGAMIではバリスタや飲み手の方に合わせて、厚みに変化をつけています。たとえば、口に当たる部分は十分な強度を保ちながら、厚すぎず、薄すぎず、心地よい口触りにこだわりました。

 

なるほど、飲んではじめて分かるこだわりですね。

加えて、このカップの縁から底にかけての曲線をみてください。滑らかな曲線で目指したのは、カップの中でエスプレッソとミルクが綺麗に混ざり合う「対流構造」を生み出すためのものです。この構造によって、コントラストの効いた美しいラテアートをスムーズにつくることができます。

また、“アロマ”と名付けられたシリーズのカップは香りを包み込むような形状にすることで、これまでとはひと味違うコーヒーを提供できるんです。

制作者の意図が伝わってきました。あと、ハンドルが小さめなので持ちにくいと思ったのですが、意外にぶれませんね。

気づいていただきありがとうございます。バリスタにとってハンドルは、ドリンクづくり、ラテアート表現を支えるオペレーションの要です。あえてハンドルをコンパクトに設計することで、小ぶりな女性の手にもしっかりと握れて扱いやすいようにしています。持ち手は小さくても安定感は抜群で、カップの重みを感じさせません。扱いやすく、飲みやすい設計を目指しました。

人の手が、繊細な色つけを支えている。

ORIGAMIカップは、土練りに始まり、成形(鋳込み成形orろくろ成形)、素焼き、施釉、焼成、検品という大きく5つに分かれた工程でつくられていきます。焼きまでの流れは、『第2回のORIGAMIを探しにいこう。Vol.2折り紙のように薄いドリッパーができるまで。』をご参考ください。
http://with-barista.origami-kai.com/cms/with_barista/koyo01/

これは色つけ前のカップですよね? これはどういう状態なのでしょうか?

ろくろ成形でつくられたカップは、素焼きを行い、施釉の工程にはいっていきます。施釉とは色を付ける作業です。釉薬と呼ばれる色のついたガラスの粉を陶器の表面に付けていきます。

基本的にカップやマグなど高さがある製品は、外側と内側の色が異なり、手作業で色の境目をつくる作業を施します。こういった細かな作業は人の手で行うのが一番ずれない。うちには熟練の職人が揃っていますので、多い数量でも生産可能です。カップの外側に釉薬をつけるとき、このひと手間が効いてきます。

釉薬につける作業も人の手が行うんですね。

カップの外側の色付けは、色むらができないようにするのが重要です。釉薬が湧き出るバケツに垂直におろし、水平に持ち上げます。これは見た目以上に繊細な作業です。うちの工場ではロボットを使った色つけも行なっていますが、ORIGAMIのカップに関しては人の手でないと品質を保つことが難しいのです。

陶器の色は、釉薬が酸化焼成や還元焼成で焼かれ、反応することでさまざまな表情を見せます。そのためこの段階では、焼き上がりの色とは異なります。

そして最後に焼成工程へと進みます。約40メートルにおよぶ窯で焼きます。窯の中の温度変化をコントロールしながら、30時間ほどかけてじっくり焼きます。

焼きあがったら、検品を行なって完成。鮮やかな色が出ます。これがそのままバリスタの方や一般のお客さまの食卓へと届けられるのです。

かけ足で紹介した、ORIGAMIのマグができるまで。使う人のこと、飲む人のことを一番に考え、設計されたマグでした。飲むとふわっと香る構造、ラテアートに最適な安定したハンドル。カラーバリエーションも豊富なので、バリスタの枠を超えて普段のお家カフェにも最適です。

そして、「ORIGAMIを探しにいこう。」の最終回となる第4回は、引き続き光洋陶器の加藤さんに製造側から見たORIGAMIの今後のビジョンをお伺いしました。ぜひお楽しみに!

加藤信吾

Kato Shingo

with Barista ! 編集長 ライター / コピーライター
ORIGAMIのブランド設計に外部パートナーとして携わるなかで、様々なバリスタと出会い、各地のスペシャルティコーヒーに感動し、気がつけば一日2杯のコーヒーが欠かせない日々を送る。
twitter:@katoshingo_

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