
より多くの人に、素晴らしいコーヒーとの出会いを【Cup of Excellence Alliance For Coffee Excellence】
マネージングディレクター、Marketing and Membership Anna Abatzoglou様
2021.11.06
コーヒーの味や香りを評価するための「カッピング」。
今回は、ORIGAMIとCOEがコラボレーションに至った経緯や、COEの活動にこめる思い、そしてカッピングボウルへの期待について、COEを主催するAlliance for Coffee Excellence(アライアンス・フォー・コーヒー・エクセレンス:以下ACE)Managing Director, Marketing & Membership のAnnaさんにお話を聞きました。
ORIGAMI 古畑:最初の質問になりますが、Cup of Excellence(カップ・オブ・エクセレンス:以下COE)について説明してもらえますか?
Annaさん:COEは世界で最も美味しいコーヒーを決める品評会のことです。
COEは、過去20年において透明性と統合性という面でパイオニアとしてコーヒー業界を開拓してきました。目標としているのは、コーヒー生産者のために賞評価の基準を設定し、高品質のコーヒーを新たに見出し、コーヒー生産者や農家がどう支払われるべきかという経済モデルとして支援することです。
審査対象となるコーヒーはものすごく厳格な精査を受けます。
ただ私たちは最高級のコーヒーの品評だけでなく、最高水準の教育機関として多くの感覚教育トレーニングを行なっており、現在はヴァーチャルでカリブレーションクラスを提供しています。
そうした教育を通して未来のコーヒーテイスターたちの成長の手助けをしたいと考えています。高品質のコーヒーを見つけて表彰し、生産者の認知度を上げるという目的につながるあらゆるサイドプロジェクトを手がけています。

ORIGAMI 古畑:これらの活動の中での、Annaさんの役割は何でしょうか?
Annaさん:私の役割はCOEと、COEを運営するACE両方におけるマーケティングとコミュニケーションで、ACEのメンバーシップ管理も担当しています。
この仕事におけるマーケティングとは何かと端的に言うのであれば、ある人が何かをするためのモチベーションを与えることだと思います。
ACEとCOEはともに非営利団体で、良いコーヒーを見つけて評価し、生産者に還元することに努めている点は同じです。
ACEはおもに品評会後のあらゆる業務を担当しており、高品質のコーヒーを広めるための舵取り役といったところでしょうかね。
カッピングのプロモーションからオークションの運営まで行います。ACEはCOEを運営するだけでなく、オークションも独自で行なっており、ナショナル・ウィナー・オークションというCOE準決勝者の豆を販売するオークションを行なっています。
そのほかにプライベートコレクションのオークションもしています。
いずれにしてもACEの専門領域はさまざまな国の新しい豆、新しい生産者を見出すことです。
ACEは現在40カ国を超える国のメンバーで構成されており、このメンバーはCOEの入札者でもあるため、メンバーなしでは私たちの活動は成り立ちません。
ACEとCOEの両方にとってメンバーはとても重要な存在なのです。
ただ、メンバーにオークションに参加するよう促すだけではなく、コーヒー農家にとっての「ハイプビースト(ファッションリーダー)」のような存在でありたいと考えています。
なぜなら日々コーヒーを飲む人たちにコーヒー生産者や彼らのコーヒーにより興味を持ってもらえたら需要がさらに上がり、オークションに参加したいと願う入札者も増え、コーヒーをより高値で売ることができ、私たちはより美味しいコーヒーを飲み続けることができます。
そのため私の役割は日々生産者たちのストーリーを共有し、より多くの人にこの人生を変えるような素晴らしいコーヒーに興味を持ってもらうことです。
メンバーシップという観点から言うと、もし今のメンバーがいなかったら入札者もなくオークションは成立しません。
だから私たちのメンバーはまさに1つのコミュニティーのようなもので、メンバー同士はメンバーになる前からお互いを知っていて、ACEの活動を通して絆を結び、審査員や入札者などとして関わってくれています。
私はその中で情報提供をしたりメンバー間の結束を強める手助けをしているのですが、メンバーがまた新しいメンバーを招いてくれたりもして、彼らの協力のおかげでCOEの価値が高まっていると感じますね。
とはいえ私たちは小さな組織で正職員は5人だけなので、全員が力を合わせて回しています。
私はマーケティングとコミュニケーションだけでなくカッピングラボのマネージャーも兼任していますし、必要とあらば何でもやります。
私は言ってみれば何でも屋で、ACEとCOEの両者を行き来しながら役立てることがあれば飛び込んで手伝う。それが私のスタイルです。

ORIGAMI 古畑:続いての質問ですが、ACEのメンバーや生産者とのコミュニケーションについてお聞きしたいです。
いま世界中でコロナ感染が深刻化していますが、こうした大変な状況の中でどうやったらコミュニケーションの維持や改善ができると考えますか?
Annaさん:これは結構難しい問題だと思っています。
人々はいつもコンピュータースクリーンの前にいて仕事などをしていて、止めどなく届く情報コンテンツをすべて読むことはなかなかできません。
そのため受け手側が情報を吸収消化しやすいタイミングでどうやってコンテンツを届けたらいいかを考えています。
誰もが忙しい生活を送っていて、情報は溢れるほどある。
集中力が持続する時間にも限度があるなかで、情報の送り手はどうにかして相手の注意を引こうと競い合っています。
私のやり方としてはできるだけ相手にとってわかりやすい方法でのコミュニケーションに努めています。
私たちが相手にしているのは多くの違う言語を話す人たちなので、彼らが容易に理解できるように、より普遍的な表現を使うようにしています。
基本的には英語を使いますが、誰もが気軽に読んでくれるように内容や言葉は複雑にせず、できるだけ分かりやすく包括的にしています。

Annaさん:ORIGAMIの皆さんは、コロナ禍でどのようにコミュニケーションが変わりましたか?
ORIGAMI 古畑:コロナ前は中国や台湾など多くの国に行っていました。そのほかにWBCイベントにも参加しました。
コロナ以降はそうした海外渡航がなくなり、すべての意思疎通はオンラインを通して行う形に切り替わりました。便利ではありますが、でもやはり対面コミュニケーションも必要だと感じるのです。
かつては外国のクライアントがよく私たちの工場に訪れてカップなどの生産プロセスを確認していました。
もちろん私たちが生産現場の写真やビデオを撮って送ったり、SNSに投稿することは可能ですが、工場の雰囲気までは伝わりません。
ACEのチームも私たちの工場にお招きしたいと思っていたのですが、それが叶わず残念に感じています。
Annaさん:本当に大変ですね。
その場に行ってみないと得られない直感的な体験は大切ですから。
たとえば工場の匂いや、グラス商品のキラキラした輝き、手に触れたときの感触などは体験者の脳に強く記憶され、その場をともに過ごした人同士の人間関係も強くなります。
私たちもそうした対面コミュニケーションができないつらさを感じています。
通常であれば世界中にいる審査員たちが生産地に足を運んでテイスティングを行います。
ブラジルのような美しい国のロマンチックなロケーションで、朝食にはポンデケージョとパパイヤを味わうといった経験もありましたが、いまやそれが叶わないのです。現地から届くコーヒーでカッピングはできますが、いつものオフィスでルーティンワークのように行う形になってしまう。
少しでもみんなの気持ちを盛り上げようと、世界各国でともに働くパートナーたちにそれぞれお気に入りの曲を集めたプレイリストを私たちのグローバルコーヒーセンター(以下:GCC)に送ってもらって流したり、ブラジルに行ったときに買ったアクセサリーを身につけ、オフィスもブラジルっぽく装飾して楽しんだりしています。
それでも実際にブラジルに行くのとは違いますよね。
できないなりに工夫や努力をして得られたものはあったし、効率も良くなったとは思いますが、実際に現地に行くという体験とはやはり違います。
ORIGAMI 古畑:とくにコーヒー業界では、直接会ってそこにいる人と話すことはとても重要ですよね。
Annaさん:そうですね。
私がこの業界に入って気づいたのは、コーヒーバイヤーたちは仕事仲間への信頼がとても厚いんです。
GCCが出したスコアや審査員の評価だけで物事を判断せず、自分が体験したことや自分が会ったことのある人を大事にします。
「あの人は生産地で一緒にカッピングをしたから信用できる」といった信頼みたいなものが背後にあって、「この人知ってる」、「あの人知ってる」、「あの団体知ってる」、「彼らは素晴らしい審査員だよ」とか、自身の経験と知見を頼りにビジネスや人的ネットワークを開拓しています。
ORIGAMI 古畑:コロナがなかったら、きっと今頃世界中を飛び回っていたでしょうね。
Annaさん:ええ、そうあってほしかったですね。
私たちは世界中に仲間や知り合いがいるのでお互い会いたくて仕方がないですね。
スクリーン越しで話すのもいいですが、対面とはやっぱり違います。
コロナが明けたら、ORIGAMIの皆さんも出張などをたくさんする予定ですか?いつもはあなた方が顧客のところへ伺うんですか? それとも向こうから来るパターンのが多いでしょうか。
ORIGAMI 古畑:両方ですね。
自由に国内や海外へ行けたのに今ではそれができないので。
ACEのオフィスはポートランドにありますが、私たちが訪れる頃にはきっとあなたは世界中に出張に行っていていらっしゃらないかもしれませんね。
Annaさん:そうかもしれないけれど、あなた方が来られるならぜひ会いたいのでポートランドにいるように調整しますよ。

カッピングボウルを通して、誰もがコーヒーへの理解を深められるように
ORIGAMI 古畑:次の質問ですが、私たちとコラボレーションする前のORIGAMIの印象を教えてください。
すでにインスタグラムを通して私たちの商品を見てくださっていましたが、知り合ってからまた違う印象を持たれたら教えてください。
Annaさん:あなたたちInstagramはいつも何か新しいものが発見できます。多くのコンテンツを共有していて素晴らしいと思います。
ORIGAMI 古畑:ありがとうございます。いつもいいね!やコメントをくださるのがうれしいです。
Annaさん:私たちが知り合ったのもInstagramがきっかけでしたからね。
私たちがフォローしているコーヒー業界の人々や会社は数え切れないほどあるんですが、ちょうど COEのフィードを見ていて、写真をスクロールしていたらORIGAMIの美しいドリッパーの写真が何度も目について、これは何? どこのブランドだろう? と気になったんです。それでORIGAMIというブランドの商品だと知ってワクワクしたのを覚えています。
ORIGAMI 古畑:ちょうど2021年の初めに、メッセージをくださったんですよね。
Annaさん:ええ、私からメッセージしました。
ちょうど丸山珈琲とのイベントを企画していて、そのイベントにおけるパートナーを探していたときにORIGAMIを思い出して問い合わせてみたんです。素晴らしいドリッパーを開発しているので印象に残っていました。
それで担当者が誰かもわからないままとりあえず当てずっぽうにインスタグラムからメッセージを送ってしまいました。
そうしたらすぐに返信をくださったので驚いたのと、すごく嬉しかったですね。
こまめにメッセージをチェックしてくれてありがとうございました。
確か金曜日の夜で、「ORIGAMIから返信来たよ!!」と、興奮気味に上司にメッセージしたのを覚えています。
ORIGAMI 古畑:私たちもまさかCOEから直接メッセージが届くなんて思っていなかったので、驚きました。繋がれたことがとても嬉しかったです。
Annaさん:インスタグラムではいろんな写真を見ていて、きれいな色合いの商品やコーヒー業界の人々などさまざまありますが、特にドリッパーの写真を求めていました。
ORIGAMIはすばらしいプロダクトを作る本当にワクワクするブランドだという印象を受けて、その印象は今も変わりません。


ORIGAMI 古畑:COEとORIGAMIが共同で作ったカッピングボウルにはどんな期待をしていますか?
Annaさん:ORIGAMIは品質へのこだわりや業界で最高のものを作るという点で私たちと同じ志を持っていると感じます。
だからコラボレーションは自然な流れでした。
COEが最も大切にしている部分の1つはプロトコルです。
私たちが行うカッピングに合わせて特別に作られたカッピングボウルを持つのは初めてで、とても大きなことなんです。
私たちの活動をさらに高めてくれますし、同じことをしたいほかの誰にとっても有益なものだと感じます。
これは本当に胸を踊らせるようなコラボレーションです。私たちのパートナーも楽しみにしていて、ACEとCOEのどちらのコミュニティーも、私がORIGAMIとの協働について話したり写真を見せたりするたびに楽しみで仕方がない様子です。
そしてこれはみんなで一緒にシェアできるものだと思っていて、一般のコーヒーテイスターたちもこのカッピングボウルにとても注目すると思います。
ORIGAMI 古畑:これから新しい商品についての顧客の反応が楽しみですね。
私たちにとって喜ばしいのは、人々がカッピングやカッピングボウルに興味を持ってくれていることです。
カッピングはコーヒー業界において品質を測るために欠かせないものですが、そのカッピングに多くの人々が関心を寄せています。
カッピングや私たちが開発したカッピングボウルに興味を持つ人と話をすることも増えましたが、SCAのカッピング・プロトコルといったカッピングの細かい部分まではまだ浸透していないようです。
でもこのCOEとORIGAMIのカッピングボウルが世界で広まり、同じ器でカッピングができるようになればもっと深くカッピングを学ぼうとする人も増えると思います。
味もより安定し、コーヒーを飲む体験やコーヒーのクオリティそのものもさらに高まっていくでしょうね。
Annaさん:ええ、すばらしい考えだと思います。
カッピングボウルを通して誰もがコーヒーの教育的要素や理解度、価値を判断する力をさらに高めることができると思います。
そしてさっきあなたがおっしゃったように、私たちは独自のカッピング・フォーム(方式)を持っていてそれをどう使うかという動画も掲載しています。
でももっと多くの情報を提供した方が良いでしょうし、どうやって人々にそのフォームや決められた器具を使ってコーヒーの評価をやってみようと思ってもらうかを考えないといけませんね。
いずれにしても面白くなりそうです。
私たちはいろいろなクラスも提供しており、今は感覚的教育クラスをやっています。
オンラインなので多くの生徒さんたちは家でカッピングをしていますが、それぞれの方が違う種類のカッピング容器を使っています。
そういったセットを通常の家庭で見られるのは興味深いです。
一緒に作ったカッピングボウルはとても注目されていて、SNSにアップしたカップの写真に対してとても多くのコメントをもらっています。
ORIGAMI 古畑:私たちとのコラボレーションを通じて、より多くの人にCOEについて知ってもらえたらと思っています。
Annaさん:そうですね。私たちにはカッパーや器具が揃っていますし。
ありがとうございます。私も共同開発できたことを嬉しく思います。
ORIGAMI 古畑:あなたのもつ観点はとても魅力的で、私たちに新たな視点をもたらしてくれると感じます。これからも良い関係を続けられたらと思います。
Annaさん:そうですね、同感です。
楽しみにしていますし、私たちが対象にしている顧客は似ているようで違うので、すべての人たちが繋がれるようにしたいですね。

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